更年期以降を元気に過ごすためのヒント「漢方薬」。漢方に興味を持つことは、自分を知ること
【月経前緊張症(PMS)】瘀血に気逆が絡んだ状態
月経の3~10日前から腹痛、イライラ、憂うつなど精神的・身体的症状が起こり、月経が始まると軽くなる病気。ベースにあるのは瘀血と気逆。加味逍遙散(かみしょうようさん)を用い、効果が不十分であれば以下の漢方薬を処方します。 ・イライラ感が強く、甘いものが食べたくなる →桃核承気湯(とうかくじょうきとう) ・ストレスが強く、胃痛がある →安中散(あんちゅうさん) ・ストレスが強く、気持ちが落ち込む →香蘇散(こうそさん)
漢方薬は選択肢が豊富
更年期症状のベースに腎虚と気逆があります。 症状全般に使われる一般的な漢方薬は「三大処方」と呼ばれ、体質によって次のように使い分けます。実証(がっちりした体型で体力があり胃腸が丈夫なタイプ)には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、虚証(筋肉が少なく疲れやすく冷えの多いタイプ)には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、どちらにも偏らない中間証には加味逍遙散(かみしょうようさん)。 また表②に示すように、心身の不調に細かく注目して症状別に漢方薬を選択する方法もあります。効果を試しながら、その人に合う漢方薬を選んでいきます。
漢方薬選択のための更年期症状チェックリスト
表②の思い当たる症状に〇をつけましょう。Aは更年期の一般的な症状です。それ以外にB ~Fのどの項目に〇がついたかが、漢方薬選択の目安となります。 ●あなたに合いそうな漢方薬は── A+B 加味逍遙散(かみしょうようさん) A+C 女神散(にょしんさん) A+D 五積散(ごしゃくさん) A+E 温経湯(うんけいとう) A+F 八味地黄丸(はちみじおうがん)または六味丸(ろくみがん)
天野先生の“とっておき”漢方薬処方
漢方薬には体質改善にゆっくり効果を表すものも多くありますが、特定の症状にピンポイントで働くものもあります。天野先生がこれまでに試してその効き目に驚いたいくつかの“特効薬”を、先生のコメントとともにご紹介します。 ・足の痙攣、こむらがえり→芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) 「筋肉の急な痙攣を和らげるので山登りには必携の漢方薬ともいわれています。尿管結石、胆管結石にも効く便利な薬です」 ・熱中症、二日酔い、下痢・嘔吐→五苓散(ごれいさん) 「水毒の特効薬です。特に子どもが水を飲んでも嘔吐してしまうような風邪をひいたときにもよく使います」 ・イライラが強い、怒りを抑えられない→抑肝散(よくかんさん) 「興奮しやすく怒りっぽかったり、神経過敏で落ち着きのないときに気持ちを鎮める漢方薬としてよく使います」 ・頭痛、しゃっくり→呉茱萸湯(ごしゅゆとう) 「片頭痛でも緊張性頭痛でも種類を問わず頭痛全般に効くので重宝しています。しゃっくりも止まるので驚きました」