更年期以降を元気に過ごすためのヒント「漢方薬」。漢方に興味を持つことは、自分を知ること
「証」をつかむ診断法
検査の数値や画像をもとに診断する西洋医学と異なり、漢方では脈診、腹診、舌診、問診のほか顔色や全身の様子を目で観察する、声を聞く、臭いをかぐなど感覚で得た情報によって診断します。 「気血水」「虚実」「五臓」など独自のものさしを基準に体質や症状をとらえ、得られた「証」をもとに、漢方薬を処方するのです。
心身の不調を「気血水」「虚実」「五臓」でとらえる
【気血水】 漢方では3つの基本物質「気血水」が体を構成すると考えます。これらが過不足なく、バランスよく、滞りなく流れている状態が健康で、変調が生じると病気になるととらえるのです。女性に生じやすい「気血水」の変調と主な症状を表に示しました。(表①)
【五臓】肝 心 脾 肺 腎 西洋医学における肝臓、心臓などの臓器と同義ではなく、体の機能を含む広い概念です。更年期の女性が特に注目したいのは成長・発育・生殖を司る「腎」。加齢現象は「腎虚」(腎のエネルギーが不足した状態)と呼ばれています。 【虚実】病気の原因と抵抗力(生命力)のせめぎ合いを「虚実」という概念で表します。 虚 •不足の意味 •虚証は体力が低下し病気への抵抗力が衰えている状態 実 •充実の意味 •実証は体力があり病気と闘う力がある状態
漢方薬の原料は多種類の生薬
植物など天然素材の生薬を原料とする漢方薬は概して体に優しく種類も豊富で、体質改善の働きをするため、症状が多岐にわたる更年期症状や月経関連症状に効果を発揮しています。
月経関連の症状改善にも役立つ漢方薬
同じ病名でも漢方薬には体質や症状によって異なる選択肢があります。
【月経困難症】主な原因は瘀血
月経時に下腹部痛のほか頭痛、吐き気、胃痛、便秘、不眠などの症状が起こり、社会生活に支障をきたす病気。ベースにあるのは瘀血。瘀血にどのような気血水の変調が絡んでいるかによって漢方薬を選択します。 ・のぼせやニキビを伴う(瘀血が主) →桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) ・色白でむくみやすい、冷えを伴う(瘀血+水毒) →当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) ・ 不定愁訴が多い、冷えのぼせを伴う(瘀血+気逆) →加味逍遙散(かみしょうようさん)