恐怖のAI兵器「LAWS(自律型致死兵器システム)」とは?使用規制が進まない複雑な事情
実際どんなAI兵器がある…? LAWSになり得る自律兵器の事例
LAWSは技術的には実現可能ですが、倫理的な懸念から広く使われてはいません。また、自律的に目標を識別・攻撃する機能をオフにした状態で販売することも容易なため、LAWSとして使うことができるものの、LAWSとしては販売されていない兵器というのが多数存在しています。そうした兵器について、何点か紹介していきます。
自律兵器の例(1):ZALA Lancet(ロシア)
ロシアのザラ社が開発したウクライナ戦争でも広く使われている自爆ドローン「ランセット」は広く知れている兵器です。 基本的には、偵察用のドローンが目標を探して座標を送り、遠隔操作でランセットが突入するといった使われ方をしていますが、偵察機から送られた写真を元に自律的に目標を識別して突入する能力もあるとされています。
自律兵器の例(2):Rafael ICE BREAKER(イスラエル)
イスラエルのラファエル社が開発した新型のミサイル「アイスブレーカー」は、ドローンではなく巡航ミサイルに分類されるものの、自律的な目標識別能力を保有しており、目標を識別して自律的に攻撃できるほか、目標が見つからなければ任務を中止することもできるとされています。
自律兵器の例(3):STM KARGU(トルコ)
トルコのSTM社が開発した「KARGU」は世界初のLAWSとも呼ばれています。自律的に目標を識別して突入する機能を有しており、実際にリビア内戦で使われた可能性があると指摘されています。ただ、こちらも目標選択は人間が行うものとされており、半自律型の兵器として販売されています。
自律兵器の例(4):GaardTech Jaeger-C(オーストラリア)
少し珍しい兵器として、オーストラリアのベンチャー企業であるGaard社が開発した「Jaeger-C」も紹介します。こちらはいわゆる「自走地雷」と呼べるもので、戦車などの目標を発見すると接近して爆発します。第2次世界大戦で使われた遠隔操作式の自走地雷「ゴリアテ」を自律型にしたとも言える兵器です。
どうすればLAWSは規制できる? 立ちはだかる壁
自律型兵器を規制する上での大きな課題が、LAWSとしての機能を持つ兵器であっても、遠隔操作や人間による目標指定が可能な点にあります。 いわゆる完全自律型の致死兵器が禁止されたとしても、企業が販売する際にはLAWS機能をオフにした合法的な兵器として販売することが可能です。機能を無効化して合法的に販売し、現場レベルで機能を有効化していた場合には第3者が把握することは困難です。 また、人間がある程度の目標指定を行う半自律型の兵器を規制する場合には、既存の類似兵器の自律性が問われることになります。誘導兵器と自律兵器の間に、どのような差があるのか、改めて定義しなおす必要が出てくるでしょう。 いずれにせよ、国際人道法の上で禁止されている兵器であっても、保有・使用している国家が数多く存在しているのが現状であり、LAWSの国際的な規制が行われたとしても、将来的には多かれ少なかれ戦場で使われることになってしまうのではないでしょうか。
執筆:フリーライター 三津村 直貴