新しい「複業スタイル」を構築した島根県の「まち」に全国から人が集まる理由[FRaU]
「これまでの仕事でも『いかに求められていることに応えられるか』ということに重きをおいてきましたが、海士町では、キャリアや経験を存分に生かすことができそうだなと思ったことが大きいです」
時間や場所の制約がなく、社員ではない働き方も理想的だった。
「アムワーカーの中には、1日10時間働いて、週4で終わらせる人、朝だけにして毎日のように働く人もいます。私は今はまだいろいろな場所を見て回って、その土地にしかない素材や料理法などを学び、もっと食の経験を重ねていきたいと考えています。だから今は住む土地も決めていませんし、固定労働がない自由度の高さは何よりの魅力なんです」
ここで憧れの仕事に就いた人もいる。 「Entô」でレセプショニストとして働く深田彩実さんは、島の滞在体験ができる『大人の島留学』の、3ヵ月の滞在型インターンシップ制度『島体験』で海士町にやってきた。学生時代から、ゆくゆくは観光業、宿泊業に就きたいと目指していたが、コロナ禍で就職活動がままならず断念。違う職業に就いたものの、諦めきれなくて退職した。 写真:「ずっと都会暮らしだった自分がまさか1年も暮らすなんて思ってもみなかった」とは、3ヵ月の島体験を延長し、現在「Entô」のレセプションで働く深田彩実さん。2023年10月からは、新たに飲食店でも働き始めた。島では人と人の距離感が心地よく、いろいろな繋がりが増える場所だと実感している。
「ちょうどそのとき島に滞在できる取り組みを知って。ずっと都市部で生活をしていたので、島暮らしでどう感じるのか、自分自身を自由研究するような気持ちで、試しに飛び込んでみようと思ったんです」 いざ来てみたら、居心地の良さに滞在予定を1年に延長することに。
「自分がやりたかった業界の仕事に就くことができたし、純粋に毎日楽しいんです。でもこの先どうするかは決めていません。不思議ですが、実家に帰る時も島に戻る時も『ただいま』と言います。帰る場所が増えたことが自分にとっては大きなこと。いつでも帰ってこられる場所があるのは嬉しいですね」