【行正り香さんにきく〝50代。これからの住まい〟に思うこと〟⑦】行正り香さんが思う「住まいづくりで、最初に考えておくべきこと」
料理家、インテリアデザイナーの行正り香(ゆきまさりか)さんが、今の場所で暮らし始めてから、20年近くがたった。先の自分自身や家族の状況を思い描きながら選んだ立地はもちろん、インテリアも「逆算」して整えたため、今もとても気に入っているそう。長く愛せる部屋をつくるコツを教えてもらった。
後から変えられない部分を先に考える
「自分や家族が心地よく暮らせる居住空間を整えたいなら、事前準備が大切です。つまり、部屋づくりも『逆算』して考えてから始めるとよいと思います。 家づくりで絶対に変えられないのは立地と面積ですが、間取りを後から変えるのも大変です。壁や柱をぶち抜けば、変えられる場合はありますが、構造上、それができないケースも多々あります。希望の間取りが可能かどうかを確認し、できること/できないことを初めに把握しておきたいですね。 次に決めておくべきなのは壁です。なぜなら、部屋の中でいちばん面積が大きいからです。インテリアを考える際、キッチンなどの設備を先に選ぼうとする方が多いですが、壁は部屋全体に影響を及ぼしますし、後から変えるには面倒な部分でもあります。 といっても、どんな壁にすればよいのか、悩みますよね。先ほどお話ししたように、住まいで絶対に変えられないのは立地です。ですから、部屋から見える景色や日当たりなどの条件に合わせて、自分が好きなテイストを決めるとよいと思います。
例えば我が家は、東京の湾岸エリアにあります。窓からは、海の向こうに成長し続ける都心が見えます。そんな変わりゆく東京に合う『モダン』をベースにしながら、普遍的な魅力がある『クラシック』を掛け合わせたインテリアにしたい、と考えました。 つまり、『モダン×クラシック』が我が家のインテリアコンセプトです。モダンとクラシックは一見正反対のテイストですが、そのどちらもしっくりなじみ、包み込んでくれる色や質感の壁にこだわって、とにかく探しに探しました」
スイッチの場所だって変えられます!
理想としたのは、ヴェネツィアにあるサン・マルコ寺院の美しい壁。 「少しザラザラとした質感が素敵で『これだ!』とひと目惚れしたんです。職人さんにお聞きすると『スタッコ仕上げ』という塗装で、イタリアのいろいろな建物に採用されているものでした。このスタッコ塗装ができる日本の業者さんをなんとか探し出し、白ともクリーム色とも違う、なんともいえない温かみのある色と質感を実現しました。大好きな絵画との相性も抜群でお気に入りです。