加藤和樹が再演「裸足で散歩」で真摯に向き合うコメディー作品の魅力とは
小池修一郎先生の言葉が背中を押した、オンリーワンを目指す道
――加藤さんは10月に40歳の誕生日を迎えられます。役者としての、これまでのキャリアの中で、ご自身の支えとなった言葉や出来事についてお聞かせください。 「僕は元々、『自分はできない』という気持ちを抱えていて、自信を持てないタイプだったんです。昔、小池修一郎先生の作品に出演した時に『君はもっと自信を持ちなさい』と言っていただいたことがあって…。そこから少しずつ、自信が持てるようになったんですよ」 ――舞台のお姿からは想像できない、とても意外なエピソードです。 「『自分はこれなら負けない』っていうものがないんですよ。歌もお芝居も、僕より上手な人はいくらでもいるので。でも、やっぱり自分にしか歌えない歌、できないお芝居は絶対あると思うので、それを常に目指すように心がけています」 ――オンリーワンのスキルを磨き続けることは、大変なことだと思うのですが、ご自身のモチベーションを高く持ち続けることができた秘訣(ひけつ)は? 「それはやっぱり、周りの役者さんたちですね。舞台を見に行った時に『やっぱり、この人はすごい』『さすがだな』と思える人たちの存在が励みになりました。その存在が、“自分ももっと…”と突き動かされる原動力になっているのだと思います。これは他の職業にも共通することですが、誰一人替えは効かないんですよ。ミュージカルだとダブルキャスト、トリプルキャストはあるけれど、それぞれの魅力や面白さがあるので、その瞬間瞬間が楽しいですね」 ――観劇する側にとっても、舞台を楽しむ上で欠かせない要素です。 「ただ、役者の仕事が特殊なのは、その成果が見えにくいことなんですよね。正解もないし、『これができたらすごい』っていう基準も実はあんまりないので。できないことが逆に武器だったりする時もあるし…。その中で、僕はできないところから始まって、いろんなことができるようになってきて、選択肢がいろいろ広がりました。その引き出しみたいなものをもっと増やしていきたいなとは思いますし、だからこそいろんな人のお芝居を見たいんです」