加藤和樹が再演「裸足で散歩」で真摯に向き合うコメディー作品の魅力とは
自分を解放することが大事だと強く感じた
――2年ぶりに演じられて、改めて印象的だったシーンはありますか? 「劇中でコリーがお母さんに対して『何でもトライする』と言うシーンですね。僕自身の座右の銘が『やればできる』なんですけれど、諦めないことの大切さをメッセージとして強く受け取っています。天真らんまんなコリーの、一見無責任な言葉が、ちゃんと的を射ているんですよね」 ――「田舎から出てきた、高齢の自分なんて」と卑下するバンクス夫人に対して、コリーが鼓舞する場面ですね。 「人生経験が豊富になると、『これは自分には向いてない』と選択肢を狭めてしまうことがあるじゃないですか。その判断能力はもちろん大切だけど、『やってみたら、面白いこともあるかも』っていう可能性を、見てくださる皆さんに感じてほしいなって、今回は特に思うんです。ポールに関して言うと、頭でっかちで堅物な人がはっちゃけたり、ジョークを言って自分を解放することも、時にはすごく大事だと強く感じました」 ――日常を生きるうえで大切なメッセージが、たくさん詰まっているんですね。 「この作品は、それを強く感じますね。こういう日常の延長線上にある作品だと見てくださり皆さんに『自分にも当てはまる部分があるかも』と共感してもらいやすいと思うので。お芝居ではあるけれど、皆さんの日常に何かを届けられたらうれしいです」
――ここから先は加藤さんご自身についてお聞きしていきます。和物から洋物、コメディーから悲劇まで、幅広い役を演じられていますが、作品や役を決める際に基準にしていることはありますか? 「基準は特になく、一度台本を読ませていただいて、作品にどういう魅力があるのか、自分の役がどんな役割を持っていて、どういう人物なのかという興味に従っています。やはり、自分自身と遠ければ遠い役ほど、演じていて面白いですね」 ――役作りでは、どんなことを心掛けていますか? 「以前、白井晃さんに教えていただいた『自分が役に近付くのではなく、役を自分に近づける』という意識を、いつも大事にしています。演じる時は、自分というフィルターを通しているので、自分が役に近付いてしまうと、どんどんかけ離れたものになってしまうんですよね。なので、まず自分というフィルターを軸にして、それから役と向き合うようにしています」