「30年に1千万人が利用」 量子技術の共同研究が始動 東芝やトヨタなどがタッグ
量子技術の産業応用を目指す「量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)」は11日、産業技術総合研究所などと連携して、量子コンピューターを活用したサービス市場の創出・拡大に向けた共同研究を新たに進めると発表した。さまざまな方式の量子コンピューターに対応する基盤の構築に向け、ソフトウエアの階層を可視化し一部の仕様をドキュメント化して2024年内に公開する方針も示した。 【関連写真】記者会見するQ-STARの岡田氏 Q-STARは21年9月、量子技術を応用した新産業の創出を目的に、東芝やトヨタ自動車など産業や企業の枠を超えた24社が設立。現在97法人が参画している。 Q-STARの島田太郎代表理事(東芝社長CEO)は「30年に1000万人が量子技術を知らない間に使っているという状況を作るのが大きな目標」と前置きした上で「ボトルネックとなるサプライチェーンの課題を最初から念頭において取り組んでいく必要がある」と指摘した。 新たな共同研究「量子計算ソリューションによるビジネスエコシステム構築の戦略的取組」は、産総研の研究拠点「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター」(G-QuAT)と連携。ビジネス向けソリューションを創出し、事業化で生み出した利益を開発に再投資する動きを促進するのが狙い。G-QuATの堀部雅弘副センター長は「短期、長期の事業化開発と市場形成を進め、ビジネスエコシステムを構築していきたい。長期的には量子技術を意識せずに使用できる社会の構築を目指す」と力を込めた。 一方で、Q-STARは、超伝導やイオントラップ、シリコンなどさまざまな量子コンピューターに対応し、だれでも利用できるソフトウエアプラットフォームの構築に向けた議論を進めてきた。Q-STAR実行委員長の岡田俊輔氏(東芝上席常務執行役員)は「場合によっては複数の方式が生き残る可能性があり、各種コンピューターをラッピングして、1つのソフトウエアプラットフォーム層で問題が解決できる仕組みを話し合ってきた」と説明する。 ユースケースと計算資源をつなぐソフトウエア構造を階層化して、共通ライブラリー部分のプラットフォーム化を実現。岡田氏は「共通ライブラリーの標準化を図り、最適なエンジンを選びながら使える環境を用意した」と述べ、グローバル展開を強化していく方針を示した。
電波新聞社 報道本部