<挑め!心一つに・’24センバツ田辺>軌跡/上 流れ乗り、自信つかむ エースと4番が軸、強豪に快勝 /和歌山
「智弁と市高に勝てた理由は何やと思う?」。主将の山本結翔(ゆいと)(2年)は昨秋の近畿地区大会が終わった後の面談で、田中格監督(51)からこんな問いを投げかけられた。「最後まで諦めなかったからだと思います」。今なら「チームの軸となるエースと4番がしっかりしていること」を挙げるが、その時はこう答えることで精いっぱいだった。田中監督からの答えはまだもらっておらず、今も考え続けている。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち チームが勢いづく転機となったのは、9月23日に行われた県1次予選の最終戦。相手は昨夏の選手権和歌山大会で智弁和歌山を初戦で降した高野山だった。勝てば県2次予選に進める重要な試合で、田中監督も「山場になる」と選手たちに伝えていた。最速139キロ右腕のエース、寺西邦右(ほうすけ)(2年)が投げきり、5―2で勝利。山本結は「智弁を倒した高野山と互角に戦い勝てたことで、チームの自信になった」と振り返る。 県2次予選では、1回戦で夏の甲子園に出場した市和歌山とぶつかった。強打の捕手、麴家桜介(2年)ら夏のレギュラーも残っていた。「緊張しない」と自負するチームは平常心を保ちながらも、厳しい戦いになる心構えをしていたという。しかし、いざ試合が始まると、4番の山本陣世(同)が初回に先制の犠飛、八回にはダメ押しの2点本塁打を放つなど、14安打の猛攻でコールド勝ちした。 「元々自分たちは長打ではなく、単打でつなぐ野球を目指してきた」と、ナインは口をそろえる。豪快なスイングで球場を沸かせた山本陣も夏以降なかなか調子が出ず、秋の大会で4番を任されたのはこの試合からだった。「あの時はヒットを打とうとしたら、ホームランになった。急に打てるようになりました」。チームの中で、何かが変わり始めていた。 「このまま流れに乗って行こう」。どこまで勝ち上がるのかという具体的な目標を掲げていたわけではないが、次の試合を制すれば近畿地区大会への出場権が得られる。センバツが視野に入る重要な試合の相手は、春夏合わせて41回の甲子園出場を誇る智弁和歌山。ただ、エースの寺西には智弁和歌山と聞いて真っ先に思い返す一戦があり、抑えられる自信があった。【安西李姫】 ◇ 「21世紀枠」で76年ぶり3回目のセンバツ出場を決めた田辺。52年ぶりに近畿地区大会に出場し、躍進した新チームの成長と戦いぶりを追う。