金融市場の「石破ショック」は一時的:石破新総裁は経済政策で岸田路線継承を表明
金融市場の「高市トレード」と「石破ショック」は一時的
9月27日の自民党総裁選挙の決選投票で、石破氏が高市氏を破り新総裁に決まると、金融市場は大きく反応した。直前には1ドル146円台で推移していたドル円レートは、一気に1ドル143円台まで円高が進んだ。急速な円高を受けて株価も下落した。日経平均先物株価指数は、2,000円近くの大幅下落となった。 海外市場に入ってからも円高・株安の流れは緩やかに続き、米国市場ではドル円レートは142円程度まで円高が進んだ。それを受けて、日経平均先物株価指数の下落幅は2,500円程度にまで拡大した。 金融市場では27日の市場の動きを「石破ショック」と呼ぶ向きもあるが、大きな動揺は一時的なものだろう。27日の投開票日までに、高市氏が総裁に選出される可能性を金融市場は徐々に織り込んでいた。さらに同日の第1回投票で高市氏が1位になると、金融市場は高市氏の勝利を高い確率で織り込んでいったのである。日本銀行の利上げに反対の姿勢を鮮明にしていた高市氏の勝利は、円安要因と市場は考えた。また、高市氏の積極財政政策は、短期的な経済に追い風との見方もあり、円安の追い風と相まって、株高も進んだ。こうした流れは「高市トレード」とも呼ばれていた。 「石破ショック」の実態は、この「高市トレード」の巻き戻しである。週明け後の30日(月)の東京市場では、現物の株価指数は大幅安で始まるだろうが、金融市場の混乱は一時的なものであり、早晩、落ち着きを取り戻すことが予想される。
日銀の利上げは支持するが独立性を尊重する姿勢か
海外市場では、金融政策を巡って石破氏が「タカ派」との認識も広まっている。確かに石破氏は、日本銀行の利上げを支持してきた。しかしそれは、高市氏を除く他の総裁選候補者も同じであり、特に「タカ派」色が強いというわけではないだろう。日本銀行が追加利上げを実施する中、円安修正が進み、それが物価高傾向を緩和させるという効果を期待しているとみられる。 海外では、石破氏の勝利で日本銀行の追加利上げの時期が前倒しになる、との見方も浮上しているが、それは正しくないだろう。 石破氏は、日本銀行の独立性を尊重する姿勢と考えられ、日本銀行に追加利上げを強いるようなことはないだろう。それは日本銀行にとっては歓迎すべきものだ。石破政権の下で、日本銀行は金融政策の自由度を維持し、自らの判断で正常化を進めていくことになると考えられる。 この先、日本銀行の金融政策に大きな影響を与えるのは、政治的な要因ではなく、為替動向、米国経済の動向、国内景気・物価動向だ。円高進行による物価見通しの上振れリスクの後退、あるいは下振れリスクの上昇、米国経済の下振れ、などが追加利上げの制約要因となる。 「高市トレード」と「石破ショック」は一時的な現象と考えられるが、それらが解消された後には、日米金融政策の方向性の違いを映して、為替市場では緩やかな円高のトレンドが続き、それが株価の頭を抑えることが考えられる。しかしそれは、金融市場の混乱とは異なるものだ。