川崎市が自動運転レベル4バスを実証実験。将来の羽田空港ルートを想定か
2027年度に自動運転バス実装を目標に動き出す
2024年8月2日、神奈川県川崎市は2027年度に自動運転レベル4で運行するバス実装に向けて、2025年1月から実証実験を開始することを発表。川崎駅や多摩川スカイブリッジなど往来の多い路線をとおるルート設定、導入車両についても公表した。 【写真】自動運転バスと走行ルートなどを見る 自動運転によって運行されるバスが行き来する社会は、もうすぐそこまできている。技術革新のスピードは速く、法律や責任の所在、保険などの自動運転にまつわる整備は多方面で進み、現在は厳重な安全確保のもとで旅客走行データを収集している段階と言えるだろう。自治体や企業による実証実験が日本各地で行われているだけでなく、実際に有料運行による実装がなされているケースもいくつかある。 これだけ急がれているのはやはりバス運転手不足という課題が大きい。人口155万人を超えた今も増加傾向にある神奈川県川崎市でも状況は同じで、運転手不足が原因の路線バスの減便に歯止めがかっていない。1万2400便/日だった6年前と比較して2000便/日も減っており、自動運転バスの実装は喫緊の課題なのだという。 こうした状況下、川崎市は2027年度に運転手を必要としない自動運転レベル4(以下、L4)によるバスの運行を開始/実装することを目標に、2024年度から実証実験を開始する。とはいえ、すぐにL4バスを導入するのではなく、2025年1~2月にかけて運転手同乗のもと自動運転レベル2で実証運行(運賃無料/予約制もしくは抽選制)して走行データを収集する。 ここで得られたデータを警察をはじめとする関係省庁に提出して、2025年度に「L4バスによる運行の許認可」を取得。2026年度にL4車両での実証実験(運賃有料)を開始。2027年度からL4車両を実装する、というスケジュールだ。
交通量が多く、県境を跨ぐルート設定の展望
2026年度の実証実験で導入されるL4バスは、ティアフォー社によって提供される。同社は完成車メーカーから提供されたバスの操作系、駆動系、システム、ソフトウェアを自動運転レベル4に対応したアーキテクチャとして導入する企業で、すでに愛知県常滑市や長野県塩尻市などでの走行試験にも導入している企業。その最新車両となる「Minibus v2.0」が川崎市に日本初導入されるという。 全長は約7.2mなので路線バスとしては小型に分類され、航続可能距離は従来から1.3倍の約200kmに伸び、座席数も3つ増加するなど進化している。乗車定員は28人だが、自動運転の実証実験中は着席のみでの運行となるため実際には座席数=16人の乗客に限るとしている。実証実験と検証が進めば、今後立って乗ることもできるようになるかもしれない。 また、L4バスの実証実験で運転手は乗車しないかわりに、大型自動車第二種免許を持たない保安員が同乗することになる。 川崎鶴見臨港バスによって運行される自動運転バス路線のルートはふたつ用意されているが、いずれも車両・歩行者ともに往来の多い地区だ。ひとつは1日に30万人が利用するという川崎駅前(市立川崎病院経由)の周辺1.3kmを1周するルート。もうひとつが京急 大師橋駅から多摩川スカイブリッジを経由して、東京都大田区の天空橋駅まで往復4.4kmを行くもので、1日の交通量3万台を数える道路を含む。 交通量が多く、橋を渡り、そして県境を越えるといったルート設定は今後、国際的な交通の要所となる羽田空港を経由して主要駅をつなぐルートでの運行を見据えてのことだという。 川崎市の福田紀彦市長は「自動運転レベル4のバスを人口密度の高い都市部で実装できれば、これは全国展開への道標になる」と市内だけではなく、日本各地への波及に向けての意気込みを語った。