各党が掲げる経済対策の効果:消費税率2%引き下げでGDPは0.4%押し上げられる計算だが。。。
一時的な給付金の景気浮揚効果は限定的
このように各党は、物価高対策、個人消費喚起策として、給付と減税の実施を主張している。ただし、消費税率の引き下げや廃止を行っても、個人消費に与える影響は一時的であり、将来に渡る個人消費の増加率を高めることはできないだろう。他方で、税収に大きな穴をあけることになり、副作用が効果を大きく上回ると考えられる。 ただし、どのような種類の対策を行うかによって、規模は同じであっても、短期的な経済効果には違いが出てくる。以下ではこの点を検証、整理してみたい。 一般に、政府の減税策は、個人や企業の貯蓄に回る部分が少なくないことから、景気浮揚効果、つまりGDPの押し上げ効果はその分削がれてしまう。他方、支出の増加であっても、公共投資と比べて、個人や企業への補助金、給付金などの支出は、消費や投資以外に回る部分があることから、やはりGDPの押し上げ効果はその分削がれてしまう。 さらに補助金、給付金も、時限的な措置であればあるほど、景気浮揚効果は小さくなる。例えば、一時的な給付金を受けても、個人はその4分の1程度しか個人消費に使わず、残りは貯蓄に回され、短期的な景気浮揚をもたらさないと考えられる。 5兆円規模の経済対策を実施した場合、公共投資であれば、1年間の実質GDPを0.92%押し上げると試算される。他方、一時的な個人向け給付金の場合には、同じ5兆円規模であっても、1年間の実質GDP押し上げ効果は0.21%と公共投資の4分の1程度にとどまる。 他方、減税の場合には、法人税率引き下げ、消費税率引き下げ、所得税率引き下げの順番に景気浮揚効果は高く、それぞれ1年間の実質GDPを0.48%、0.43%、0.25%押し上げると試算される(図表)。
消費税率2%引き下げはGDPを0.4%、消費税廃止はGDPを2.0%押し上げる
2023年度の消費税収は23兆923億円となった。軽減税率などを考慮しなければ、消費税率1%は2.3兆円の税収に相当し、上記の試算である5兆円規模の消費税減税は、消費税率2.2%ポイント程度の引き下げに相当する。ちなみに、消費税率2%の引き下げの実質GDP押し上げ効果を計算すると0.40%となる。また、消費税率廃止による効果は1.99%となる。 消費税率の引き下げや消費税廃止によって、短期的には相応の景気浮揚効果が生じることが期待されるものの、社会保障費の財源と位置付けられる消費税の見直しによる大幅な税収減がもたらすマイナス面を考えれば、とてもそれに見合う政策ではないだろう。各党には、財源の裏付けをしっかりと明示したうえで経済対策を議論して欲しい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英