<解説>「G-レコ」10周年 富野由悠季監督の未来へのメッセージ
◇かつてギレン・ザビに言わせたこと
「G-レコ」は、エネルギー問題も大きなテーマになっている。
「エネルギーは地球に埋蔵されているものを使っている。地球というのは有限なんです。これからずっと人類が使えるか?というと、使えない。枯渇する。あと残ってるのはフォトンだけ。太陽が死滅するまでの時間を考えると、30億年くらいは使えるだろうから。問題なのは、それができるか? できるわけないよね、現に石炭や石油を使えないご先祖様たちは、太陽光の元で暮らしていたわけじゃないですか。その歴史を素直に受け止めて、そろそろ戻らなくちゃいけないんじゃないの?って話。フォトン・バッテリーに込めているメッセージはそこなんです」
富野監督はシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」の時代から未来を見据えてアニメを作ってきた。
「人間にとって大事なのは、農業と漁業しかない。あとの技術は一切合切、余分なこと。今の地球でそれができるか? できないんです。ガンダムで最初に『増えすぎた人類を……』と言ったことです。人類は総人口を半分にするくらいの覚悟を持たなくちゃいけない。それも、かつてギレン・ザビに言わせたことです。でも、資本主義の考え方の恐ろしいところは、絶えず上昇していかないといけない。既に人口が100億人になったらまずいと言っている人もいるけど、このままでは地球は100年も持たない」
◇“知の愚明”とは?
富野監督はインタビューで“知の愚明”という言葉を何度も口にしたこともあった。「現代の知は“愚明”に振り回されている。愚かなのは明らか」と。「GAFA(米国のグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社)の問題がある」とも話していた。
「ネットビジネスはこれまでのビジネスとは違う。今後、もつのかな?と考えている。ガンダムのような仕事で、エネルギー論、戦争論をやってきた。ネットビジネスは、全部が虚業なんじゃないか? あっという間に地球を食い尽くす。クリック数で勝負するという根本の構造は、実数と違って実体がない。この質の違いを我々が理解するには、時間がかかると思う。危機だと気がついた時には、みんなで窒息死する。ネット技術を開発し、なぜこのことに気がつかないのか? 資本主義が生まれて、たかが300年で、GAFAのようなものを生んだ。知識人はなぜ、拡大するだけの経済を止めようとしないのか? 地球が丸いことはみんな分かっている。資本主義が変な進化をしてしまい、人類が増え続け、みんなで食っていけるのか? 食っていけないよね。なぜかそれを理解しない。“知の愚明”、愚かなのは明らかなんです」