<解説>「G-レコ」10周年 富野由悠季監督の未来へのメッセージ
科学技術は進歩しているが、人類はその進歩についていっているのだろうか?とも感じる。
「技術は直線的な進化しかない。戻ることができない。AIの歯止めが利かなくなった時、電源を切ればいいと言うけど、人類は電源を切れない。僕は阻止する方法が思いつかない。だから『G-レコ』を作ることになった。『G-レコ』は戦記物じゃない。戦記物でベトナム戦争までの人類史をなぞってきたけど、もうそんなことをやる暇はない。自分が気持ちよく死んでいくために、人類が絶滅する予測をしたくない。『G-レコ』では、人類が絶滅しそうになった後、文明を取り戻した世界を描いている。そこで、明るいお話を作ることができる。ただ、こういう話はしちゃいけないんです。こういう話をすると、アニメですよね?という話で止まるんですよ。解決策が見当たらない。こういう話は毒なんです」
「持続可能な社会の実現」とも叫ばれるようにはなっているが、「政治の世界の言葉遣いで一般化しませんよね。政策として浸透していくだろうけれども、やはり時間がかかる。テーゼとして広がっていくとは思えない。アニメというような媒体だから言えることを積み重ねていく方が早いかもしれない」とメッセージを込めた。
「G-レコ」は、未来への希望が込められている。見る度に発見のある作品でもある。“古びないメッセージ”を受け取ってほしい。
ちなみに、「G-レコ」の劇場版の完結編となる第5部の公開前にインタビューした2022年、次作「ヒミコヤマト」の構想も語ってくれた。「卑弥呼が戦艦大和を宇宙戦艦ヤマトみたいに飛ばしちゃうという話を作りたいわけ」と話していたが、一体どうなるのか? こちらも楽しみにしたい。