<解説>「G-レコ」10周年 富野由悠季監督の未来へのメッセージ
「ガンダム」シリーズに影響を受けて科学者になった人も多い。富野監督は、自身が生み出してきた作品の影響の大きさを感じていたようだった。
「僕自身も経験してることで、現在の日本の宇宙開発をメインにやってる人間は意外にガンダムファンなんです。言ってしまえば、僕の教育が悪かった。そこまで責任は持たないんだけど。それがあるから、決着を付けておかないとまずい。僕自身が小学校5年生から20歳くらいまでは宇宙オタクだったんです。でも、宇宙開発についていえば、気象衛星を打ち上げたり、地球を定点観測したりするのが限界。これ以上のものはむしろ必要ない。月を領土にしたら統治できるのか? SFの世界でもあったことだけど、統治できない。簡単な問題で、距離なんですよ。通信が発展しても難しい。でも、子供の頃の勘違いをそのまま持ち込んで大人になってしまって、ロマンにとらわれているんです。ガンダムを作り続けてきたから思えることなんです。『∀ガンダム』が終わってから、10年くらい何も考えていなかった。でも、ガンダム的なものを全否定するものを作らないといけないと思ったんです」
“全否定”といえば「そもそも『G-レコ』は『ガンダムの冠を外すんだ。根本的にガンダム離れをしなければいけないんだ』という思いから始まった企画です」と話したこともあった。
「作品としても『∀ガンダム』まで30年、ずっとガンダムを作ってきて、その結果としてニュータイプ論で挫折したわけです。今の人類はニュータイプになれない。ガンダムで一番意図していたのは、人類が一挙にニュータイプになるというハウツーを示すことだったけれど、今の世界情勢や政治家を見渡しても、全く成功していません。ガンダムのコアなファン層は40代です。だから、そういうところをターゲットにしてしまうと、どんどん先が無くなってしまいますよね。ですから『G-レコ』は子供たちをターゲットにしたわけです」