若い漫画家から飛び出した「手塚治虫って誰ですか?」…令和の若者にこそ読んでほしい手塚漫画とっておきの「2作品」
これは見ておいてほしい、手塚作品とは
――金澤さんが考える、これは見ておくべきだという手塚作品と、その理由を教えていただけますか。 金澤:まず、『紙の砦』です。手塚先生の自伝なのですが、戦中戦後の混乱期の社会のなか、漫画にいかに打ち込んできたのかが描かれています。高校生の頃共感し、何度も読み返しました。舞台が、僕が育った大阪をはじめ、知っている場所も出てきた影響もあって、親近感を抱きました。「大変な世の中だけど自分も何かを生み出したい」と思う方に、ぜひ読んでいただきたいと思います。 ――他には、どうでしょうか。 金澤:『アドルフに告ぐ』をおすすめします。あのアドルフ・ヒトラーが実はユダヤ人だったという機密文書から始まる旧日本と、ナチスドイツに育つ2人のアドルフの成長劇です。今読んでも、壮絶な時代の人間模様と戦争という強大でままならないものが描かれ、読めば読むほどその渦の中に入ってゆくドラマに、中学から高校生にかけて夢中になりました。 ――中学~高校時代に『アドルフに告ぐ』を読むとは、凄いですね。晩年に描かれた手塚作品のなかでも、ストーリーが練り込まれた傑作です。 金澤:僕は本作を読むまで、機動戦士ガンダム』や『風の谷のナウシカ』に影響されていたアニメオタク少年でした(笑)。対して、手塚作品や少年漫画、アニメーションは子どものためのものと決めつけていたので、『アドルフに告ぐ』を読んだ時のショックは大きかったですね。ぜひ、今の若い世代には、10代のうちに読んでほしいと思います。 ――ありがとうございます。最後に、手塚作品が若い人たちにもっと支持されるようにするためには、どうすればいいと考えていますか。 金澤:ファンの方が直接若い方々のもとに赴いて、一緒に鑑賞する機会を設けることだと思います。あとは、家族で観る機会があるといいですね。コロナ禍以降、ご家庭で映像作品を観るきっかけが増えたように思います。手塚作品に親しんできたご両親や祖父母のみなさんも、照れたりせず、お子様やお孫さんに当時の良い思い出話を含めて視聴されてはいかがでしょうか。読んだ、観たというだけでなく、周りの人と話した時間や環境も含めて楽しめるのが手塚作品ではないかと僕は思います。 ライター・山内貴範 デイリー新潮編集部
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