<箱根駅伝>青学に往路V3を運んだ3区“湘南の神“秋山の復活物語
「箱根は成功体験を重視しているので、3区には秋山を起用したいと思っていたんですけど、10日前は500%無理な状態でした。でも、本番まで1週間を切って、状態が上がってきたんです。結果として、理想のオーダーを組むことができました」と原監督。秋山の状態が上がらない場合は、準エースの田村和希を3区に起用する予定だったが、苦しい1年を過ごしてきた男が、最高の走りを披露する。 「前回と同じぐらいのタイムで走らないといけない、という思いもあったんですけど、結局は自分の走りをするしかいない。ベストを尽くせばいいんだと自分のなかで決着したんです。2位でタスキをもらって、38秒は簡単に抜ける差ではありません。不安もありましたが、抜いたらヒーローなんだ、とプラスに考えました。最初の1kmが2分53秒と遅かったので、昨年の自分はバッサリ捨てて、今年は今年だと割り切って走りました。気象条件なども違うので、それが良かったのかなと思います」 秋山はテレビ中継にゲスト出演していた先輩・神野大地(現・コニカミノルタ)から「湘南の神になったね」と絶賛されるほどの大活躍。3・4年時の学生駅伝出場は箱根の3区のみだが、2回ともスペシャリストといえるようなクレバーな走りを見せた。大逆転のストーリーが生んだ秋山の快走劇。原監督の「選手の見極め」は本当に素晴らしく、「選手への信頼感」も厚かった。その一方で、他の有力校は、賭けに敗れた。 前回2位の東洋大はエース服部弾馬が1区で区間トップを飾るも、目論んでいた「30秒以上」のリードには届かなかった。前回3位の駒大は故障あがりのエース中谷圭佑が4区で区間18位と失速した。東海大は1年生パワーが不発に終わり、ロケットスタートが期待されていた山梨学大は出雲と全日本で1区を好走した上田健太を5区に配置転換。1区で20位と出遅れると、5区上田も区間7位ともうひとつ伸びない。往路で青学大からアドバンテージを奪う戦略で臨んだ有力校は、仕掛けた区間で空振りに終わることが多かった。 反対に復路での逆転Vをイメージしていた原監督は、「往路で4分以上離されると自力では勝てない。2分以内なら『よし、がんばるぞ!』で、1分以内なら『やれるぞ!』と思っていました。今回は33秒のリードですから、うれしい誤算。100点満点です」と最高のかたちで往路を折り返した。 追いかける早大も選手層の厚いチームで、復路にも強力メンバーが揃う。しかし、青学大は、準エースの田村と下田裕太を当日変更で投入する予定で、その戦力は他大学を圧倒している。「まずは6区小野田勇次でリードを広げて、気温が上がる7~10区は楽に走らせたい」と原監督。「3連覇」&「駅伝3冠」のビクトリーロードは明確に見えているようだ。 (文責・酒井政人/スポーツライター)