<箱根駅伝>青学に往路V3を運んだ3区“湘南の神“秋山の復活物語
2区終了時で、首位を独走するのは神奈川大。第93回箱根駅伝はちょっと意外な展開で幕を開けた。「3連覇」&「駅伝3冠」を目指す青学大は、1区梶谷瑠哉がトップ東洋大と4秒差という絶好のスタートを切るも、2区一色恭志でトップを奪うことができない。神奈川大を38秒追いかける展開で、3区秋山雄飛が走り出した。 原晋監督が「一番心配していた」という3区だったが、秋山が今年も“湘南の風”になる。遊行寺(5.4km地点)でビハインドを28秒にすると、その差をグングンと詰めていく。そして、13.1km付近で神奈川大を抜き去り、トップに立った。 圧巻だったのは、そのレース運びだ。遊行寺(5.4km地点)の通過タイム7位から、茅ケ崎(14.3km)で3位に浮上。湘南大橋(18.1km地点)では早大・平和真に5秒差をつけてトップへ。最終的には1時間3分03秒で走り、2位の平に29秒差をつけた。ダントツの区間賞で後続に1分22秒もの大量リードをもたらしたのだ。秋山の快走で勢いに乗った青学大は、そのままトップを独走。芦ノ湖では3年連続となる往路Vに沸いた。 秋山は前回3区を区間歴代4位の1時間2分24秒で走破している選手。22秒差で追いかけてきた東洋大・服部弾馬を引き離して、鉄紺軍団の野望を打ち砕き、駒大・中谷圭佑ら同学年のエースたちを抑えて区間賞に輝いている。 3区の距離は「21.4km」だが、秋山が二度目の箱根路にたどり着くまで、長く苦しい道のりが待ち構えていた。今季は調子の浮き沈みが激しく、試合では失敗レースが続いたという。「自分はメンタルが弱くて、良くないときは、チームにも暗い雰囲気を出してしまいました」と秋山。4月の5000mでワースト記録となる16分22秒に沈むと、7月の5000mでも再び16分台という屈辱のタイムに終わり、「完全に気持ちが折れました」と振り返る。 その直後の学年ミーティングで、主将の安藤悠哉から「このままだと後輩もお前についてこないぞ」とゲキを入れられ、「やっぱり、あきらめきれない」と箱根への思いを取り戻した。日帰りで地元・兵庫のスポーツ内科で不調の原因を検査すると、「気管支喘息」と診断される。夏合宿は気管支喘息の治療をしながら、「4年間で一番走れた」というほど充実したトレーニングを積んだ。しかし、10~11月は調子が上がらずに、出雲と全日本は走ることができなかった。 その後は徐々に調子を上げて、エントリーの16名に入ったが、レース10日前のポイント練習で撃沈する。5km×2本のメニューで、1本目は15分07秒、2本目は21分ぐらいかかったという。 「5kmは2本目で挫けてしまい、気持ちが折れましたね。メンバー入りは500%無理だと思ったんです。その後は、走る気持ちが起きなかったんですけど、次のポイント練習の16000mペース走が予想外に走れて、『いけるぞ』という気持ちになったんです」 16000mペース走の後に、トレーナーに身体の状態を診てもらうと、フィジカルに問題はなかったという。「懸念すべきはメンタル」という言葉に、心機一転。秋山は「考えすぎてしまう」タイプだが、物事をポジティブに考えるようにしたことで、絶好調まで持っていった。