英国のEU離脱 ヨーロッパ大陸を襲う“第二波”
欧州懐疑主義の台頭 懸念されるEU離脱のドミノ現象
また、イタリア以外の国でも国民投票によってEUからの離脱を目指そうとする動きが、各国の右派政党関係者の間で活発になっている。 イギリスにおける国民投票の結果が判明した頃、フランスでは国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が、「自由の勝利!これまですっと言い続けてきたが、今こそフランスや他のEU加盟国でも同様の国民投票を実施すべきだ」とツイッターで支持者に呼びかけた。ルペン党首は「Brexit」のフランス版として、「Frexit」という造語を多用し、支持者に対して「28カ国で構成される欧州連合は崩壊している。あらゆる部分に亀裂が存在している」と、欧州共同体の機能不全を訴えかけた。 シリア難民の受け入れ問題などでEUに対する不信感が高まりつつあるデンマークでも、反イスラム主義を掲げ、通貨ユーロの導入とトルコのEU加盟に反対する右派政党のデンマーク国民党が、EUからの離脱を問う国民投票をデンマークでも行うべきと主張し始めた。議席を急増させ、議会内での発言力がこの数年で増大したデンマーク国民党は、現政権に閣外協力するほどまでに力をつけており、デンマーク国内の世論にも大きな影響力を持つ。スウェーデンのアイリーン・ヴェネモ雇用副大臣は、デンマークで国民投票が実現した場合、周辺の北欧諸国でも国民投票を行うべきだとの声が上がる可能性を指摘。スウェーデン政府がデンマークの動向を注視していると地元メディアに語っている。 また、過去にEUがウクライナとの経済・政治的結びつきを強化することに有権者の3分の2が反対したオランダでも、極右政党として知られる自由党のヘルト・ウィルダース党首が、「自国でも国民投票を行い、EU離脱か残留を国民に問うべきだ」と訴えている。これらの国以外でも、国民投票の実施を求める声は少数派ながら存在する。イギリスの国民投票の結果がもたらした衝撃の第一波がブリテン島とヨーロッパ大陸の政治的な溝の広がりだとすれば、二波目はヨーロッパ大陸内における欧州懐疑主義の台頭かもしれない。 (ジャーナリスト・仲野博文)