子宮頸がん検診 新たにHPV検査が導入 従来の「細胞診」との違いは?
子宮頸(けい)がん検診に、今年度から新しい検査が導入されました。原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染の有無を調べるものです。感染していなかった場合、次の検診は5年後で、従来の2年に1度より期間を空けられるようになります。採用している自治体は一部にとどまりますが、今後、広がる可能性もあります。(影本菜穂子) 【図解】HPV検査の流れ
子宮頸がんは30~50歳代に多く、年間1万人以上が新たに診断されています。その95%以上がHPV感染を原因としています。 HPVは性交渉を通じ、8~9割の人が感染すると考えられています。多くは自身の免疫でウイルスを排除できますが、感染が長く続くと、がんになるリスクが高まります。国立がん研究センターによると、HPVに感染した女性が8000人と仮定すると、感染が続くのは500人、子宮頸がんの発症に至るのは1人程度としています。
早期発見が重要
ワクチンでHPVの感染を予防できますが、既に感染している場合、ウイルスを排除する薬はありません。このため、定期的な検診で早期に異常を発見することが重要になります。これまでは、子宮頸部から細胞を採取し、がん化していないかなどを調べる「細胞診」が20歳以上を対象に2年に1度、行われてきました。
30~60歳が対象
新しい「HPV検査」は、細胞のウイルス感染の有無を調べます。30~60歳が対象で、検査の結果、感染していない陰性と判定された場合、子宮頸がんとなるリスクは低いため、次回の検診は5年後になります。一方、陽性で感染が確認されると、追加で細胞診を行います。そこで異常がみられず、それ以上の検査が不要となれば、1年後に再度、HPV検査を受けます。この追跡検査は、陰性となるまで、毎年続きます。 同センターによると、HPV検査は細胞診より早い段階でリスクの高い人を発見できる半面、受診間隔などが守られないと、「効果が細胞診を下回る可能性がある」と指摘しています。 同センターがん対策研究所検診研究部長の中山富雄さんは「検査で陽性となる人は1割弱と予測されますが、陽性でも心配し過ぎることはありませんし、日常生活を変える必要もありません。ただし、追跡検査は確実に受けるようにしてください」と呼びかけます。 子宮頸がんの経験者で、啓発に取り組む阿南里恵さん(43)は「陽性の場合、自身の体にリスクがあることを理解し、確実に検診を受ける意識を高める効果もあるのでは」と話します。 検診でHPV検査、細胞診のどちらを行うかは、実施主体の市町村が判断します。HPV検査の導入には、受診者のデータベースの作成など厚生労働省が定める条件を満たす必要があります。このため、現在実施しているのは、ごく一部に限られています。 HPV検査による検診マニュアルの策定に携わった赤坂山王メディカルセンター院長の青木大輔さんは、「HPV検査を導入する自治体は今後、増えていくと思われます。ただし、検査の結果にかかわらず、月経以外に出血があるなど何らかの症状があれば、産婦人科を受診することが大切です」と指摘しています。