「大相撲秋場所が10倍面白くなる」技以外の決まり方も5種ある?実況40年の元NHK藤井康生アナが“奥深すぎる決まり手ベスト5”を徹底解説/『MonoMaxお相撲同好会』
大相撲をこよなく愛する編集部スタッフたちが、さまざまな角度から大相撲の魅力をお伝えする連載「MonoMaxお相撲同好会」。 ⇒【関連写真】「相撲の雑学」元関脇・豊ノ島が語る“幕内力士の夏場所ファッション”秘話とは?意外な交友関係も!? 今回は、NHKのアナウンサーとして38年、ABEMAで2年半、合計40年以上、大相撲中継で実況を務めている藤井康生さんが登場! 力士たちが土俵で繰り出す技の知識と、覚えておくと大相撲がより楽しめる、代表的な決まり手について解説していただきました。
決まり手は全82種類! 技以外の決まり方も
お相撲同好会 そもそも、決まり手(技)はどれくらいあるのでしょう? 藤井 82手あります。 お相撲同好会 よく言われる四十八手(相撲の技を総称するときの呼び方。もともと48手だったかは定かではない)じゃないんですね! 藤井 1955年に日本相撲協会が68手と決めて、1960年に2つ増えて70手になりました。その後、2001年に決まり手を82手にしたんです。もう引退されましたが、大山親方(元前頭2枚目 大飛)という方が決まり手係(場所中に、取り組みの決まり手を判定する)を務めていらっしゃったのですが、とても技に詳しい方だったんです。この大山親方が「もっと決まり手を増やしたほうが、より具体的な決まり手を発表できる」と協会に提案して、82手になったんです。 お相撲同好会 一度に12種類も増えたのですね。 藤井 それに加えて、決まり手以外の決まり方も5種類あるんです。相手の一方的なミスによって勝負がつく決まり方ですね。この5種類の決まり方は技ではなく勝負結果であって、決まり手とは違うものとされています。 お相撲同好会 どんな決まり方があるのでしょう? 藤井 勇み足、腰砕け、つき手、つきひざ、踏み出しの5つです。以前は勇み足と腰砕けの2つだけでしたが、決まり手を82手に増やしたときに、3つ加えたんです。これも大山親方のアイデアですね。
決まり手は大きく分けて「押し相撲」と「四つ相撲」の2つに分類される
お相撲同好会 力士が得意とする型を説明するとき、「押し相撲」「四つ相撲」という言葉を使いますが、それぞれの意味を改めて教えてください。 藤井 簡単に言うと、「押し相撲」は体が密着せず、手だけが相手の体に触った状態で相手を押していく取り口です。「押し相撲」にもいろいろあって、手のひらを相手の体に当てながら押していくまさに押し相撲という形や、腕を素早く回転させて相手の胸や腹のあたりをボンボンと押していく「突き相撲」というのも「押し相撲」に入ります。喉輪といって、相手の喉のあたりを下から突いたり押したりして相手の体を起こしていくという取り口も「押し相撲」になります。 お相撲同好会 相手を近づけず、腕で押したり突いたりするのですね。 藤井 押しているなかで、一瞬、横から突いて相手を倒す場合もあります。最近は、自分から引いて、相手の体がつんのめったところを叩き込んでいく力士もいますね。 お相撲同好会 相手と距離をとるのが「押し相撲」。「四つ相撲」はどんな相撲ですか? 藤井 「四つ相撲」は、相手と体が密着した状態で、相手を倒したり、土俵の外に運び出したりする取り口です。 お相撲同好会 相手のまわしを取る相撲ですね。 藤井 相手のまわしを取らない「四つ相撲」もありますよ。相手の脇の下に右腕や左腕が入っていたり、あるいは上から(相手の脇あたりを)抱え込んでいたり。共通しているのは相手に密着した状態で相撲をとっていることで、そんな取り口を「四つ相撲」といいます。 お相撲同好会 どちらの型をメインに戦うかは、力士によるんですね。 藤井 両方できる力士もいますよ。幕内力士になると、ほぼどちらもできる力士が多いですね。どちらか一方しかできないという力士のほうが少ないかもしれません。 お相撲同好会 やっぱり、いろいろなケースに対応できる力士が強いのですね。相撲の取り口が大きく二つに分かれるから、決まり手も「四つ相撲」と「押し相撲」に分かれるというのも理解できました!