「声が出ない」のは致命的…声優・水島裕さん声帯ポリープ手術を振り返る
【独白 愉快な“病人”たち】 水島裕さん(声優/68歳) =声帯ポリープ ◇ ◇ ◇ 【写真】声優の宮村優子さんは「バセドー病」と「橋本病」の両方を経験 「声優になりたい」と相談されることがありますけど、基本「やめた方がいいですよ」と伝えます。なぜかというと、努力が100%認められるわけじゃないからです。僕が思うに、運が60%、健康が30%、努力や才能は10%くらいかな?(笑)。それだけ出会いや巡り合わせは大事だと思います。僕は運が良かったんですよ。そして健康に恵まれました。両親のおかげで病気知らずでしたから。2020年春、64歳で声帯ポリープの切除手術をするまでは……。 この年の4月中旬にかすれ声がなかなか治らず、「あれ?」と思ったんです。いつもなら舞台やコンサートで激しく喉を使っても2~3日寝れば回復していたんですけど、そのときは悪化するばかり……。声帯が閉じず「アー」が「ハー」になってしまうような息が抜ける状態でした。 それで、いつもお世話になっている山王病院を受診しました。そこには耳鼻咽喉科のほかにボイスセンターがあって、渡邊雄介先生という僕がものすごく信頼している先生がいらっしゃるんです。 先生に声帯の写真を撮ってもらうと、声帯の左側が少し出血していて、さらに白くポチッと盛り上がったイボのようなものがあり、ピタッと閉まらない状態でした。「これは明らかな声帯ポリープです。手術すれば1週間ぐらいで治りますよ」とのことでした。 でも当時、TBSのお昼の情報番組で月曜から金曜まで毎日ナレーションをしていたので、それが気がかりでした。結局、事務所と番組サイドの話し合いで「来週はピンチヒッターを立てましょう」ということになり、お休みさせていただきました。番組に関わってからの16年間で初めてのことです。 「声が出ない」って、僕らにとって致命的なんですよ。まったく出ないわけではありませんでしたが、「声でこんな表現をしたい」と思ってるのに、コントロールできない。それがとてもつらいんです。だから、手術しない選択肢はありませんでした。 人生初の手術でしたし、声帯にメスを入れることへの不安は若干ありました。でも、信頼している渡邊先生から「大丈夫。任せてください」と言っていただいたので、迷いはありませんでした。 たとえば習い事でも、ものを教わるときは「何を教わるか」も大事だけど、「誰に教わるか」も大事じゃないですか。きっと手術も同じで、僕は良い先生に出会えたので安心して身を委ねることができました。