恐竜などを絶滅に導いた天体は「炭素に富んだ珍しい小惑星」の可能性が高い
6600万年前の白亜紀末に起きた大量絶滅は、直径約10kmの天体が衝突したことが原因であるとする説が有力です。では、この天体はいったいどこからやってきたのでしょうか? 恐竜絶滅後に発生した別の天体衝突が回復中の地球環境に影響を及ぼした可能性 ケルン大学のMario Fischer-Gödde氏などの研究チームは、大量絶滅が起きた当時の堆積物に含まれる元素「ルテニウム」を調べたところ、衝突した天体の正体は木星より遠くで形成される、炭素に富んだ珍しい小惑星だった可能性が高いことが分かりました。地球に衝突する小惑星のうち、ごく普通の岩石で構成された小惑星が全体の約80%を占めていることを考えれば、白亜紀末の天体衝突はかなり珍しいケースであることが分かります。
■白亜紀末に起きた天体衝突
今から6600万年前の白亜紀末に、全動物種の約70%が絶滅する出来事が起きました。この大量絶滅は、恐竜が現在の鳥類となるごく一部の系統を残して絶滅したことでも知られています。その原因として、巨大な天体が衝突したとする「天体衝突説」は、大量絶滅の主因、または唯一の原因であるとする論調が主流です。 直径約10kmであると推定される天体は、現在のメキシコ、ユカタン半島に衝突し、「チクシュルーブ・クレーター」を形成しました。衝突によって大量に舞い上がった岩石の粉塵は地球全体を覆い、長期にわたる日光の遮断が発生し、光合成を基盤とする生態系が根底から破壊されたことが、様々な生物の絶滅原因であると考えられています。 天体衝突が有力視されるのは、大量絶滅の時代に堆積した地層「K-Pg境界」を分析した結果です。ここには白金族元素が多く含まれています。白金(プラチナ)が高価な金属であることからも分かるように、白金族元素は地表では珍しいですが、地球外からやってくる天体には多く含まれています。 ただし、白亜紀末の大量絶滅の原因が天体衝突であることがほぼ確定した後においても、衝突した天体の正体については議論が続いていました。