サンマ水揚げ増加も“豊漁”程遠く… 国際協調で資源回復へ
サンマの漁獲が、歴史的不漁からやや回復している。ただ、長い目で見れば2020年代の大不漁と比べ微回復した段階で、2010年代前半までと比べると8割ほど少ないペース。〝豊漁〟との声も聞こえてくるが、実態は程遠い水準だ。低迷する資源の回復へ、希望の光はあるものの、まだまだ道半ば。業界からは、国際的な資源管理の進展による漁獲の復活を期待する声が上がっている。
全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)によると、10月末時点の全国のサンマ水揚げは2万9344トン。既に昨年までの直近3年間の最終実績を上回り、ここ6年間の10月末の水揚量としては最多だ。2020年以降は毎年同時期に1・6万トン未満だったのと比べると改善がみられる。
しかし、楽観はできない。今年の最終的な水揚量は4万トン前後で着地するペースで、2014年までの30年以上に渡り20万~30万トン台の水揚げが“当たり前”だった時代には遠く及ばない。
資源量は今も少ない。国立研究開発法人水産研究・教育機構などの評価によると、北太平洋のサンマについて、2007年以降は過剰漁獲の年が多く、2009年以降の親魚の量は漁獲を最大化するために必要な量(MSY水準)に達していない状況が続く。同機構担当者は「今年の漁期前調査からみると、資源量は昨年とほぼ同じ」と分析。漁獲量の増加と資源量の関係については「漁獲には漁場の状況も関わる。例えば水温が高いせいで魚群が南下できず、漁場にとどまっているなどの線もあり、資源が回復したと考えるのは早計だ」と語る。
全さんまも「ここ数年と比べ、少し回復しているのは間違いない」としつつ、「今年は4万トンに行くかというペース。20万トン時代と比べ、とても豊漁とは言えない」とコメント。今年は例年より大型漁船の出漁日を早めたため、見かけ上の初漁の水揚量が増えた。このため豊漁に関する報道が過熱したとし、「11月5日くらいから漁場が見つからない。来遊が漁期の途中で切れるという予報通りで、今後も勢いが続く感じではなさそう」と付け加える。