11月歌舞伎座特別公演『ようこそ歌舞伎座へ』の案内人・虎之介が歌舞伎の魅力を語る!
「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南する本連載。今月紹介するのは、11月歌舞伎座特別公演『ようこそ歌舞伎座へ』に出演している中村虎之介さん。立役から女方まで幅広く活躍する注目の花形俳優です。『ようこそ歌舞伎座へ』で案内役を務めるほか、舞踊『石橋』では、獅子の精を勤めています。ファッションにも詳しく、今どきのカルチャーにも通じている虎之介さんだけに、歌舞伎初心者や外国人観光客だけでなく、歌舞伎ファンも楽しめるように企画を盛り上げてくれるはず。そこで虎之介さんに歌舞伎の楽しみ方からご自身のプライベートまでをバイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧が深堀りします!! 写真多数!デニムが似合う中村虎之介さん
■高校生のときから5年間、裏原でバイトしていました
まんぼう部長 歌舞伎のお話をする前にちょっとお洋服のお話を(笑)。虎之介さんが服好きだということはウワサで聞いていましたが、本当におしゃれさんなんですね! 歌舞伎俳優のイメージが一新される感じです。 ばったり小僧 本当に! 今日着ていらっしゃるのも私服なんですよね。まるでスタイリストさんが用意したお洋服のようにバッチリ決まっています。上下デニムに派手めのスニーカー、とっても似合っていますね! お洋服はいつ頃からお好きだったんですか。 虎之介 高校生のときから5年間、いわゆる「裏原」でバイトをしていて、それですっかりハマりましたね。販売とか営業とか色々やって、最後のほうはもう本社の社員になれるぞくらいにまでなって(笑)。コロナ禍で歌舞伎の公演がなくなったときに、(中村)七之助さんに「歌舞伎がなくなったら、虎が一番成功するわ」って言われました(笑)。 小僧 そんなに本格的にやっていたとは!? 虎之介 裏原のカルチャーに興味があったんですよね。あまりに熱心に仕事をしていたので、店長に「おまえ、家のほうは大丈夫なのか」って何度か心配されました(笑)。 小僧 お父さま(中村扇雀)も心配されたでしょうね。 虎之介 そうですね。当時は、歌舞伎よりもファッションに夢中になっていた時期だったのですが、逆に他の世界を見たことが糧となって、今につながっていることがたくさんあると思っています。 裏原って、音楽とファッションが融合したカルチャーなんです。それって意外にも歌舞伎と通じるところがあるんですよね。 だからNIGO®さんとか、ファッション業界の人が歌舞伎を観ると、すごく面白がってくれるし、やっぱり衣裳の色使いとか、僕たちの視点とは違うところで観ていて、それがとても面白くて。そういう考え方を知ることで、自分も役者としての幅が広がるんじゃないかと思いました。 部長 さて、そんな虎之介さんが11月歌舞伎座の特別公演『ようこそ歌舞伎座へ』にご出演されます。 虎之介さんは、歌舞伎座を裏側まで紹介する『ようこそ歌舞伎座へ』のナビゲーターを務めるほか、『石橋』で獅子の精も勤められます。 虎之介 はい。まず『ようこそ歌舞伎座へ』は、歌舞伎座の舞台装置や照明などをフル活用しながら、歌舞伎座という劇場の裏側を紹介しつつ、立廻りなどの実演も入れ込み、歌舞伎のおもしろさをお伝えできたらと思っています。 小僧 これまでも国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」で解説を務められたことがあるので、その経験も生かせそうですね。 虎之介 そうですね。じつは若い頃、国立劇場でやっていた「歌舞伎鑑賞教室」をお客さんとして観たことがあるんですけれど、そのとき、周りの学生が退屈そうにしていて、もっと若者の気を引く演出が必要だなと思ったんです。 それで自分が『歌舞伎鑑賞教室』をやることになったとき、考えました。 どうしたら若い人のテンションが上がるか――これは簡単なんです、会場を真っ暗にすればいいんです。照明がパッと消えた瞬間、若者は「うぉ~!」って盛り上がる(笑)。 小僧 なるほど~! ライブの前みたいな感じですね。 虎之介 ですね。それで『歌舞伎鑑賞教室』でも、まずは劇場を真っ暗にしたところから洋楽をガンガン流して、照明をピカピカにして(笑)。あえて和服ではなくて、カジュアルな洋服で登場して。それでデニムのセットアップから10秒くらいで羽織袴に早替りをするのを披露したりしました。 部長 それは斬新! しかも10秒って!! 虎之介 今回も初心者のかたには、「歌舞伎ってこういうものだったのか!?」という意外性を楽しんでいただけるように、また普段、歌舞伎をご覧になっているかたにも絶対喜んでいただけるものをお見せできるようにしたいです。 部長 そういう発想が出てくるのは、それこそファッション業界の方々とつきあって、イベントなんかをたくさん経験してきたからの発想かもしれないですね。 虎之介 だと思います。たぶん普通に歌舞伎だけやってきたら、そういう発想にはならなかったと思いますね。 品位ある歌舞伎座では、そこまで過激なことはできないかもしれないですけれど(笑)、限界まで挑戦してみます!