伊調のパワハラ問題浮上の背景に何が?過去には不透明な五輪選考問題も
レスリング競技は勝者、チャンピオンを尊ぶスポーツだ。その精神性そのものには問題はない。あるとすれば、勝者を尊ぶあまり、組織運営まで勝者の思うがままにさせてしまいかねないことだ。どんな選手でも一敗もせずに生涯を終えることがないように、どんな人間でも間違いを起こすことはある。にもかかわらず勝者はあやまちを犯さない、失敗することがあると考えてもいけないという条件でつくられる組織は、えてしてバックアップシステムをつくらない。そういった組織の内部で疑問を口にする難しさは、容易に想像がつくだろう。多くの人は諦め、口を閉ざし、静かに消えてゆくだけだ。 何か問題が起きた場合にも、その事象を明らかにしたり、解決に向かうための仕組みがレスリング協会内部には存在しないことに、今回の告発側は絶望していたのではないか。そして他の手段を模索した結果、第三者から公正に判断してほしいと、公益財団法人としての資格を問える内閣府に一縷の望みを託したのだろう。 今回のパワハラ問題の調査は、日本レスリング協会の倫理委員会が調査にあたると5日発表された。委員会が6日に開かれることだけは公表されているが、時間や場所、内容については非公開で、後日、概要だけ知らせる予定だという。内部の組織による調査で、はたして公正に調べることができるのか。公益財団法人なので評議員会に頼る方法もあるだろうが、こちらもメンバーは身内ばかりだ。やはり、第三者委員会を立ち上げる話から始めるべきではないのか。いずれにしろ協会はガバナンスを機能させるための組織のあり方を見直す必要があるだろう。 (文責・横森綾/フリーライター)