地方創生交付金、7年度予算案は倍増 新規性乏しく効果不明「カネだけまいても…」
令和7年度予算案では、地方自治体の振興を目的に交付される地方創生交付金が6年度当初比で倍増された。政府は同時に、自治体の借金に当たる臨時財政対策債の新規発行額を平成13年度の制度創設以降初めてゼロとし、財政再建との両立もアピールする。ただ、東京一極集中の流れを食い止める中身を伴っているかは不明だ。交付金を配るだけの従来手法から脱却しなければ、本来の地方創生の実現は遠いままだ。 「都市と結びついた楽しい日本を実現する観点から、地方創生の検討、実現を図っていく」 臨時国会が閉会した24日の記者会見で、石破茂首相はこう強調した。首相はかつて初代の担当相を務め、地方創生をライフワークとしている。それを反映するように、政府は7年度予算案で「新しい地方経済・生活環境創生交付金」と名付けた地方創生交付金を2千億円計上した。 自治体からの申請を「ソフト事業」「拠点整備事業」「インフラ整備事業」に振り分け、それぞれについて国が伴走支援を行う。各事業の効果の評価・改善にも注力し、「やりっぱなし」を防ぐ算段だ。 ただ、その中身は新規性に乏しい。たとえば「スポーツを活用した地域活性化」「道の駅に隣接した観光拠点整備」といった事業が想定されるが、既に多くの自治体が取り組んでいるような項目が並ぶ。 「これまでは申請があっても、予算の制約によって全て採択できていなかった」。財務省幹部は予算倍増の効果を説くが、多くの自治体が抱える最も深刻な問題は人材の流出だ。地方選出のある国会議員は「人がいないのに、カネだけまいても地方がまともな政策ができるとは思えない」と指摘。交付金の効果には早くも疑問符が付いている。 5年の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過は約12万7千人で、今後もこの傾向は続く見込みだ。従来の地方創生政策が十分な成果を上げていない現状から目をそらさず、地域社会の再生を図る必要がある。(根本和哉)