着心地やデザイン、エコ観点まで目くばり。選手を支えたパリ五輪公式ウェア製作秘話
衣服内環境を快適に保つこだわり
大堀:コンディショニングに関しては、パリは東京に比べて朝晩の寒暖差が大きいので、暖かいときはウェアの中のムレを適度に出して、寒いときは温かさを中にキープできるものを目指しました。それを実現するために、 ACTIBREEZE(アクティブリーズ)という機能をバージョンアップすることにしました。 今回のACTIBREEZEは、アシックススポーツ工学研究所で解析したボディサーモマッピングをベースに、どこが汗をかきやすくてどこが熱を持ちやすいかを解析した上で、動くことによって開くメッシュ素材のレイアウトを考えて適切に衣服内環境を快適に保つように作ったのが機能面でのポイントですね。 いままで寒いときはこのジャケットの上にウィンドブレーカーみたいなものを着ていたんですが、重ね着するジャケット自体を削減できたので、このあたりも環境負荷の少ない形で進めることができました。
グラデーションで個性と統一感を表現
──ポディウムジャケットは1枚1枚が違うデザインだと伺いました。 大堀:グラデーションの生地を使ってるんですが、よく見ていただくと本当に全部違うんですね。微妙に。 通常こういう柄物ってユニフォームにおいては同じように見えるよう設定するのですが、柄によってはロスが出やすいんです。今回のグラデーションは生地を同じ位置で裁断しない設定にしているので、無駄な廃材が出にくいんです。ただ、同じチームに見えないとダメっていうところがあるので、それをうまく調整して一つ一つは違うんだけど、チームとして見た時はきちっと統一感があるデザインを意識しました。 ──相反することをグラデーションで表現すると。それってめちゃくちゃ難しくないですか? 大堀:そうですね。むちゃくちゃ難しかったですね。実際にいくつかサンプル作成したり3DCGでシミュレーションしました。 これは余談なんですけど、先日JOC(日本オリンピック委員会)さんから伺った話で、オリンピックに出場したとある選手がジャケットを脱いで写真を撮っていたらしいんですね。撮影が終わって自分のジャケットを手渡された時に、それぞれが「あ、私のこっち」って言って、僕らから見たらわかんないんですけど選手の方から見たらわかる、みたいな感じのお話を聞きました。コンセプトが伝わっていてよかったなーっていうのは思いましたね。