着心地やデザイン、エコ観点まで目くばり。選手を支えたパリ五輪公式ウェア製作秘話
日本の伝統模様をピクセル化
──ほかにも選手の方からフィードバックはありましたか? 大堀:僕もパリへ行ったんですけど、JOCさんのご厚意で選手村に寄らせていただいて、多くの選手やスタッフの方からお話を聞くことができました。今回は海外からもこのTシャツの評価が高かったと聞いています。海外の選手からTシャツを交換してほしいと頼まれたのも結構あったみたいですね。 Tシャツには矢絣(やがすり)という日本の伝統模様をベースにTEAM JAPAN用に作った「YAGASURI グラフィック」を採用しました。勝ち柄というか、縁起のいい柄です。矢を放ったら一方向にしか進まなくて後戻りしない、ということで勝負事のユニフォームに使われるモチーフなんですけど、ここにいろいろな要素を入れています。分かりやすいところで言うと梅だったり、あとはTEAM JAPANのモチーフだったりとか。 視認性が高いので、10万人近い収容の競技場でもこれを着ている人はすごく分かりやすかったですね。 大堀:あとは、リラックスしたいとき用に、同じ柄なんですけどバーチっていうベージュっぽいグラデーションを使ってビッグシルエットにしたTシャツも提供しました。オンとオフの切り替えみたいな感じで使ってもらえたらということで。 JOCさんに聞いたら、選手やスタッフの方々は、日ごとに着用するTシャツの色を決めて、TEAM JAPANとしての一体感を高めることに役立てていたようです。
無茶振りから生まれた「サンライズレッド」
──この「サンライズレッド」という色、そもそもいつから使われるようになったのでしょうか? 大堀:サンライズレッドは2015年に世界陸上の北京大会用のウェアを担当した時からです。その前のウェアはわりと特徴的な白と赤だったんですが、赤を使っている国っていっぱいあるじゃないですか。アメリカ、デンマーク、あと中国とか。 そうしたら、当時の上司に「なんか見ててもどれが日本かわからへんねんけど、わかるような感じにしてくれや」みたいに無茶振りされたんですよ。その時に蛍光にしたらいいんちゃう?って思って。 でもこの世の中に蛍光色の赤って存在しないんですよね。蛍光のグリーン、ブルー、イエローはあるんですけど。だから蛍光のセーフティー系の資材を買ってきて、これを染めてくださいって言って、その時にできたのがサンライズレッドだったんです。 最初は賛否両論ありました。こんな派手な色って言われて。それでもいろいろなアレンジをしたり、継続的に使用することで、だんだん日本代表のカラーみたいな感じに認知されるようになりました。