苦境・日産とホンダの統合にワクワクしない理由――「日の丸液晶」ジャパンディスプレイの二の舞ではないのか
■ ホンダの「変節」 それにしても解せないのは、ホンダの変節ぶりだ。 1998年「世紀の合併」と言われたダイムラー・クライスラーの誕生を皮切りに、マツダがフォードの傘下に入り、日産はルノーの傘下に入った。巨大連合が次々誕生し「400万台(年産)クラブ」ともてはやされた。 「200万台のホンダはどうする」 そう言われた時の心境を、当時社長だった吉野浩行氏はこう語っている。 「二人三脚より、独りで走った方が早いに決まってる」 規模に走らず我が道をいく。それがホンダの流儀だった。EVで畑違いのソニーと組んだのもホンダらしい。ホンダは2024年4月~6月期に過去最高となる4847億円の営業利益を叩き出している。EVと自動運転で出遅れた感があるとはいえ、日産ほどには追い込まれていない。 ホンダなら独力で生き残るのではないか――。 筆者は密かにそう期待していた。 いたずらに規模を追うのは、あまりにもホンダらしくない。
■ 「救済ではない」を強調 株式市場も同じ気持ちのようだ。日産との経営統合が報じられて以来、ホンダの株価は下落を続けている。投資家は「ホンダが日産救済に乗り出す」と見ているのだ。 「はっきり申し上げるのは救済ではないということだ」 23日の記者会見でホンダの三部俊宏社長は「日産救済」の否定に躍起だった。 「2030年の断面を見て競争力を持つために検討を始めるのだ」 だが否定すればするほど、三部氏の言葉は根拠を失っていった。 質疑応答で「相手のどこに惚れたのか」と聞かれると、三部社長はしどろもどろになる。 「日産は伝統、企業文化があり、数々の名車を生んできた。尊敬に値する会社だ」 過去の栄光しか褒めるところがない。三部社長の回答は、端なくも今の日産の苦しさを如実に物語った。 そんな会社となぜ経営統合するのか。 外から強烈な力が働いたとしか思えない。経産省だ。