骨の病気で医療的ケアが必要な娘。「人は、見たことがないものを珍しく思い、怖がってしまう」やわらかい気持ちの社会に【骨形成不全症・体験談】
ただそこにいる一員として、普通に接してもらえたらうれしい
――のんさんは今、難病児・障害児・医療的ケア児家族の居場所づくりの活動をしていますが、どんな活動なのか教えてください。 のん 2022年12月から、岡山市を中心に「LeLien(ルリアン)」という名前で難病児や障害児、医療的ケア児とその家族を対象とした活動をしています。お子さんを14歳で亡くされたママと2人で立ち上げました。月に1回、訪問看護ステーションのフリースペースでお話し会をしていて、お話し会に参加できない方には、出張でもお話し会やイベントもしています。 活動の対象は、今お話しした障害児や医療的ケア児とそのご家族だけではなくて、子育て中の方や子育て経験のある方、その支援者や協力者の方、そしていちばん大事なのは、そういう方とご縁がない方にも、知っていただくために活動しています。幅広くいろいろな人に来ていただいて、1人でも多くの人の理解につながるようにと考えています。 「LeLien」は、フランス語で「縁、絆(きずな)、つながり」という意味です。この言葉のとおりに、出会ったお子さんやご家族とのつながりや縁、絆を大切にしていきたいと思っています。今頑張っているお子さんとその家族や、お空に旅立った天使たちもみんながつながっているというイメージで名づけました。なんでも話せて、情報共有できる居場所作りであるのはもちろん、どんな人でも参加できる場所になればいいと思っています。 ――障害をもつ子や家族の方に、どう接していいかわからない人も多いようです。のんさんは、どのように接して、声をかけてもらえるとうれしいですか。 のん 本当に難しい質問です。人によって違うため、あくまでも“私が思う”こととしてしかお話しできないのですが、いちばん思うのは、ただそこにいる一員として、普通に接してほしいなということです。まったく存在しないかのように扱われたり、逆に好奇の目で見たり、腫れ物に触るかのように扱われるのは、やはりあまり気分がいいものではありません。 ただ、これは障害の有無にかかわらないと思いますが、困っている様子が見られたら「何か手伝うことはありますか」と声をかけていただけるとうれしいです。よく、「かわいい」って声かけてもいいですか、と聞かれることがあるのですが、私の場合は、気をつかわずに話しかけていただきたいです。 ――大人よりも、意外と子どもの反応のほうが正直でいいかもしれませんね。 のん 本当にそうなんです。以前、小さいお子さんが恵愛を見て「怖い、お化けだー」って言ったことがあるんです。とても素直な反応で、不思議と嫌な気持ちにはなりませんでした。お母さんも「そんなこと言っちゃダメ」などと言わず、近くで見守っていらして。「お化けじゃないよ、人間だよ。見て、こうしたら笑うんだよ」と教えてあげたら、最後には「かわいい」と言ってくれました。 医療器具がついているので、お子さんが興味を持って恵愛のほうに来ると「(けがをさせたら悪いから)近づいちゃダメ」というお母さんもいます。でも、本当に危ないときはちゃんとお伝えするので、興味があれば、どんどん触れ合ってほしいです。いろいろな人がいて、いろいろな状況で生きている。それを知る貴重な機会を、大人が奪ってしまっているような気がします。 ――これから、のんさんはどんな社会になっていってほしいと思われますか。何かメッセージがあればお願いします。 のん 不特定多数の方が見ているSNSでは、今までにも心ないコメントもたくさんもらいました。多様性の社会といっても、まだ障害児に対する根強い差別があるのだなと感じることもあります。それはやはり、人と人を「分ける」社会のあり方に問題があるんじゃないかなと思います。つまり、病気の人はこっち、健常の人はこっちというように、境界線を引いてしまっているのです。 一方で、配慮をしていただかないといけない部分もあるので、まったく境界線をなくしてしまうのも危険です。ただ、私たちのような障害児や医療的ケア児の家族は、決して特別扱いをしてほしいわけではないんです。 ――特別扱いをしているのは、社会のほうかもしれませんね。 のん 特別扱いすることなく、こうした子どもたちが当たり前にそこにいて、ビクビクせずに普通に社会に出られるようになってほしいと思います。たとえばアニメやゲームに出てくるモブキャラにそういう子が普通に1人いるのでいいんです。変に優しくしなくてもいいから、同じ舞台にいることが当たり前であってほしい。 障害をもつ子のことを見て、マイナスの感情が出てきてしまうことがあったとしても、少なくとも否定をしないでいただけたらうれしいです。 「そういう子もいるんだな」と受け止めることができるようになるには、幼いころから「分ける」ことなく、そうした子と普通に触れ合って、当たり前に隣にいることではないでしょうか。 やはり人は、見たことがないものを珍しく思い、怖がってしまう面があると思います。いろいろな人がいて、1人1人が一生懸命生きている。やわらかい気持ちでそれを受け入れてもらえる社会になったらいいなと思っています。 お話・写真提供/のんさん 取材・文/樋口由夏、たまひよONLINE編集部 障害があってもなくても、みんな同じ舞台に立つ一員。主役であろうと脇役であろうとモブキャラであろうと、みんな1人1人大切な存在。だから当たり前に接してほしい。のんさんの強い気持ちが伝わってきました。「いろいろな人がいることを、やわらかく受け入れられる社会」という言葉が深く心に残り、そうありたいと強く感じました。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
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