骨の病気で医療的ケアが必要な娘。「人は、見たことがないものを珍しく思い、怖がってしまう」やわらかい気持ちの社会に【骨形成不全症・体験談】
嘔吐は多いけれど、それもひっくるめて恵愛だと受け入れる
――退院後、自宅での生活では、恵愛ちゃんに嘔吐(おうと)があって苦労したそうですね。 のん 実は入院中からとても嘔吐が多かったんです。恵愛は気管切開をしているので、嘔吐することで切開部分が汚れないようにガーゼをするなど、看護師さんが試行錯誤してくださった技(わざ)を家でも使っています。 いまだによく嘔吐はしています。原因ははっきりわかりませんが、主治医に「それも含めてすべて恵愛ちゃんだから、受け入れていくしかないよ」と言われ、私もそう思っています。まわりの人たちはとても気にかけてくれますが、私たち家族は嘔吐をなんとかしたいというよりも、すべてひっくるめてうまくつき合っていこうと思っています。 ――退院して初抱っこしたときはどんな気持ちでしたか。 のん それまで病院では、「この日に抱っこします」と予約しないと抱っこできなかったんです。心拍を見て、看護師さんに見守られながら、恵愛をひざの上に乗せて、抱っこと言えないような抱っこをしていました。 でも家に帰ってきたら「そうか、もう勝手に抱っこしていいんだ。自分が抱っこしたいときにできるんだ」と思って。今なら大丈夫そうかなというときに、抱っこしました。抱っこしたときは、「なんか近いね。楽しいね、うれしいね」という感じ。恵愛もうれしそうにしていました。 ――恵愛ちゃんは退院後に人見知りするようになったそうですね。 のん NICUではたくさんの病院のスタッフに囲まれていたので、それまでは人見知りはありませんでした。「だれを見ても一緒なのかな」とか、もっと言うと「私がお母さんだなんて認識していないかも」と思っていたんです。でも、退院して1カ月後あたりから、訪問看護師さんや訪問診療の先生が来ると泣くようになって、私が恵愛のそばに行くと泣きやむことがあって。お母さんという認識が進んできたのかなとうれしくなりました。 ――恵愛ちゃんにとって、パパやお兄ちゃんたちはどんな存在なのでしょうか。 のん パパのことももちろん好きで、家族だという認識があるんだなと感じます。とても信頼している様子は見られるのですが、どうしても私じゃないとダメなときもあります。お兄ちゃんたちもよくかわいがってくれて、恵愛も大好きなようです。ただ、ニ男はまだ妹というよりも、ペットのように思っているみたいです(笑) ――今も通院はされているんですか。 のん 月に1回、通院しています。お薬が変わりないかとか、体重の増え具合などを見てもらっています。退院してから、検査入院以外で入院したことは1度もなくて、ずっと調子がいいので、看護師さんたちには「恵愛ちゃんは強いね。ご家族もよく頑張ってますね」とほめていただいています。
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