「毎朝3分あれば弁当を作れる」超多忙オードリー・タンがデリバリーではなく手作りにこだわる納得の理由
多忙な日々の中、効率よくタスクをこなすにはどうすればいいのか。起業家であり台湾のデジタル担当大臣に抜擢された経歴も持つ“若き天才”オードリー・タンは、さまざまなツールやテクニックを駆使して時間管理をしているという。約2年ぶりの最新刊『オードリー・タン 私はこう思考する』(かんき出版)より、彼女が実践する時間管理術について紹介する――。 【この記事の画像を見る】 ■朝目覚めたら最初にすること 2020年、オードリーが「ポモドーロ・テクニック」で時間を管理していることがメディアで報じられると、社会はこの話題でもちきりになった。多くの人がその効能を知るとともに、オードリーも改めてよさを認識した。スマートな時間管理術は明晰な思考の末にたどり着いた方法であるだけでなく、仕事に縛られず、自分の人生の主導権を握るためのカギでもあるのだ。 デジタルの世界に精通したオードリーにとって、業務効率を向上させる方法はいくらでもあり、「ポモドーロ・テクニック」は数ある時間管理術のうちの一つにすぎない。オードリーの1日の過ごし方を知れば、政務で多忙な日々のなかで効率よく仕事をこなしつつ、生活の質の向上や自らの学びのための時間をいかに生み出しているかがよくわかる。 オードリーがリモートワークをしていたころ、異なるタイムゾーンの同僚たちとオンラインで仕事をするため、眠りにつくのはいつも明け方だった。だが、彼女は通常8時間の睡眠を必要とする。政務委員になってからは毎朝9時に出勤しなくてはいけない。オードリーは1日の時間を次のように配分している。 「毎朝7時前後に目覚めますが、すぐにはベッドを出ません。昨夜の夢で見た新しい考え方やアイデアを忘れないうちに書きとめます。書き終えたらベッドを出て、朝食を食べ、昼食用の弁当を用意して出かけます」
■弁当が3分以内に出来上がる簡単アウトソーシング オードリーの時間管理は仕事や睡眠だけにとどまらない。毎日の弁当に使う食材の購入も専門業者にアウトソーシングすることで、自分の時間を自分でコントロールできるよう努めている。弁当の準備にはほとんど時間をかけない。せいぜい10分もあれば終わる。 2021年はじめ、オードリーのオフィスで取引企業の説明会が開かれた。それぞれのチームがクリエイティブなアイデアを発表するなか、目を引いたのは「享厨好食(シオンチューハオシー)」というスタートアップ企業のサービスだった。栄養士が1日3食の食事プランを立ててくれるというもので、時間の節約と食生活の改善が期待できる。 オードリーが享厨好食に食材を発注すると、毎週、希望のメニューに応じ、洗ってカットした食材を自宅に配送してくれる。届いた食材を冷蔵庫に入れておくだけでいい。朝起きて、その日の弁当に使う食材を開封して鍋に入れたら、10分かからずに完成する。 最近では弁当作りにかける時間を3分以内に抑えている。「最近は混ぜるだけのメニューにしているので、ますます短時間になりました。2分か3分あれば十分です」 オードリーに言わせると、飾り切りや特別な盛りつけが必要な場合を除き、食材を切るのが自分でもほかの人でもたいした違いはない。食材の準備に自分の時間を費やす必要はないのだ。機械的な作業は専門業者に外注し、調味料の配合や食材同士の組み合わせといったクリエイティブな部分は、調理する人が自由に決めればいい。 ■デリバリーよりも早く効率よく健康的な食事とは ここ数年、フードデリバリーサービスが急速に成長し、より手軽においしい料理を食べられるようになった。しかし「デリバリーでは遅いのです」とオードリーは言う。 彼女にとっては、いつでもどこでも、食べたいと思ったときにすぐに作って食べられることが大事。思ってから食べるまでの時間はとにかく短くなければいけない。専門の栄養士が下ごしらえした食材があれば、食べたいと思った瞬間にすぐ冷蔵庫から出して調理できるため、デリバリーを待つよりも早い。 「食材の準備がすんでいれば、料理の時間は短縮できます。健康な生活習慣作りにも役立つと思います」 仕事で疲れているからとデリバリーを頼む人は多い。SNSでおいしそうな料理の投稿を見ると、つい揚げ物を頼んでしまう。こういう生活は気づかないうちに体に大きな負担をかける。栄養士が選んだ食材を届けてくれたら、栄養不足や食べすぎの心配はなくなり、メンタルにもいい影響が出る。 食材を外注することは、時間の節約と健康のほかにもメリットがある。帰宅してから自分で食事の準備をすることで仕事の緊張感から解放され、リラックスできるのだ。かつては音楽を聴いたり、ネットにコメントを書いたりするのが最高のリラックス法だったが、料理することで緊張がほぐれるのを実感してから新たな習慣になった。