新型コロナ対策 米国の「国家非常事態宣言」と歴史的な渡航中止勧告の関係は
感染症対策を含む大規模災害への対応
国家非常事態宣言の中でも、大規模災害への対応用として特別の法律が定められている。1988年にできたスタフォード法(「災害救助・緊急支援法」)のことで、国家非常事態宣言を出すことで、連邦緊急事態管理局(FEMA)に積み立ててきた巨額の資金を災害救済金として切り崩して使うことが可能になる。 ハリケーンや竜巻、洪水など大規模で多数の被災者が出る災害が対象であり、2005年のハリケーン「カトリーナ」災害などで発動されたのが同法に基づく対応の典型例である。 日本でいえば、激甚災害指定に似ている。 スタフォード法は過去にも2000年の西ナイル熱流行の際の感染症対策にも利用されてきた。
宣言を補完する行動自粛や渡航中止勧告
今回の新型コロナウイルス対応への国家非常事態宣言はスタフォード法が適用されている。急速に感染が拡大し、金融市場が動揺するなど経済が打撃を受けている中、非常事態を宣言することで、FEMAが州政府や個人への財政支援を行っていく。多くの州が独自に非常事態宣言を出しているが、今度は中央政府である連邦政府がリーダーシップを取りながら各州間の調整をしながら、対策を行っていく。 ホワイトハウスによると、現在の積立金は400億ドル強であり、その中から災害救済金として、検査や治療が受けやすくなるよう、ドライブスルー形式の検査場などを作っていくほか、新たな検査キットを認可し、医療機関への規制も緩和するなど、検査加速のため態勢を拡充する。 これに加え、今回の国家非常事態宣言には、感染拡大防止策として欧州などからの入国禁止措置の発動なども含まれている。 トランプ大統領は16日、米国民に向けて10人超の集会やレストラン、バーなどでの飲食を15日間自粛するよう求める行動ガイドラインを発表した。さらに18日には、1950年に制定された民間企業に特定の製品の増産を求めることができる防衛生産法(国防生産法)を持ち出して、マスクや人工呼吸器など、新型コロナ封じ込めに向けた取り組みで必要な備品の生産を加速させる特別権限の行使を明らかにした。また、同日、国外全域への渡航警戒レベルを4段階で最も厳しい「渡航中止・退避勧告」(レベル4)に引き上げ、全ての国外渡航中止を勧告するという歴史上まれにみる大胆な決断を行った。すべてが今回の非常事態宣言を補完するものだ。