58歳ホリフィールドが非難殺到試合で元UFC王者に109秒TKO負け…「ストップが早い」と抗議もトランプ前大統領は判断を支持
ホリフィールドは40歳を過ぎてもリングに上がり続けていたが、最後にリングに上がったのが10年前。かって耳を噛みちぎられた“永遠のライバル”のマイク・タイソンが、エキシビションマッチで復帰したことに刺激を受けて、タイソン戦を実現するためにトレーニングを開始していたが、58歳なのである。しかも、当初、ベウフォートと対戦予定だったのは、48歳の元6階級制覇王者のオスカー・デラホーヤだったが、新型コロナに感染してキャンセル。わずか8日前に代役オファーが届いたばかり。 試合に向けての準備などできるわけはなく、試合を行う予定だったカリフォルニア州のアスレチックコミッションは、ホリフィールドが試合に出ることに対して、たとえ、それがエキシビションマッチであっても許可しなかった。ボクシング関係者やファンも「無謀だ」「やってはならない」と非難の声を浴びせた。 だが、約50ドル(約5400円)でPPV放映する予定で視聴者契約を取っていた主催者の「トリラー」は、ライセンスが許可される場所をあわてて探し、比較的ルールの緩いフロリダ州で、エキシビションではなく、ボクシングの公式試合として認めさせることに成功したという醜い背景もあった。 一方、22年前にPRIDEで桜庭和志と対戦した経験もあるベウフォートは、まだ44歳と若く、2018年5月の「UFC 224」で、リョート・マチダにKO負けをして引退したが、その後、ONEチャンピオンシップでの復帰を模索するなど、まだ現役に近く、スピードやパワーの差は歴然としていた。 しかも、ベウフォートは打撃型の総合選手でボクシングマッチの経験もある。全米のメディアは、ホリフィールドの敗戦を大々的に報じたが、CBSスポーツが「サーカスのような試合」と表現するなど、この試合を「茶番劇」と捉える見方が、ほとんどで、ゲスト解説として登場したトランプ前大統領について報道する記事の方が目立った。ラスベガスの“カジノ王”時代に、マイク・タイソンとマイケル・スピンクスの統一戦をプロモート。ホリフィールドとも個人的な親交があることを説明していたトランプ前大統領は、レフェリーのストップが正しかったと認め「彼はかつてのファイターではなかった。その左ジャブは非常に遅かった。彼は多くを失った」と、ホリフィールドへの厳しいコメントを伝えた。 評価散々の試合を終えたホリフィールドは、それでも懲りずに「タイソンと戦いたい」と、対照的にロイ・ジョーンズ・ジュニアとのエキシビションマッチで株を上げていたタイソンとの第3戦の実現を熱望していた。 一方のベウフォートはリング上で吠えた。 「立ち上がってくれたホリフィールドとホリフィールド陣営に感謝したい」と、レジェンドに、リスペクトを伝えた上で「私は相手を倒すためにやって来た。次もボクシングファイト? 100%だ。世界のボクシングチャンピオンたちよ。オレと戦う準備をしてくれ。階級はどんな選手だっていい」とアピールした。 ターゲットは、世界的人気ユーチューバーのジェイク・ポール。兄のローガン・ポールに比べてボクシング技術は高く、この8月には元UFC王者のタイロン・ウッドリーに判定勝利するなどボクシングマッチは4戦無敗だ。 ボクシングビジネスに積極的に参戦している「トリラー」の運営責任者は、ベウフォート対ジェイク・ポール戦に、2500万ドル(約27億2500万円)のファイトマネーを用意していることを明かし、ベウフォートは、「勝者が全部を取るルールでいい。やるぞ!」と対戦を熱望した。 全米メディアのほとんどが、安全や選手の健康管理に問題があり、話題先行、ビジネス重視型のこの“ショーボクシング”がもてはやされる傾向にあきれると同時に、警鐘を鳴らしているが、この流れは、止められそうにない。