70歳、中小企業を経営しています。報酬は月80万円なのですが、年金を全額受け取るために報酬を減額したほうがいいでしょうか?
会社役員には定年がないため、年金を受け取る年齢後も高い報酬を得ていることが多く、年金が停止・減額されています。そこで70歳を迎える中小事業主Tさんは、相談することに……。 現在、報酬は月80万円ですが、年金を全額受け取るには報酬をいくらにすればよいのだろうか? それとも年金が停止・減額されても多く収入を得たほうがよいのか、FPが解説します。
年金制度を理解する(在職老齢年金)
60歳以降、働きながら年金(老齢厚生年金)を受け取る人は、一定の金額を超えると年金額の一部もしくは全部が支給停止されます。この仕組みを在職老齢年金といいます。 厚生年金保険の加入は70歳未満ですが、70歳を超えても会社(適用事業所)で報酬が出ていると、何歳になっても在職老齢年金の仕組みが適用されます。そのため、仮に90歳でも現役並み以上に報酬を受け取っていると、老齢厚生年金の報酬比例部分が全部もしくは一部停止されます。 Tさんは、不動産株式会社を経営しています。子どもがいないため、事業承継に悩み、いまだ現役で働いています。大きな既往症がないので後継者を育てるまで、現役で働く予定です。 65歳の時、繰下げ制度を知らずに年金を受け取り、なぜか2ヶ月に1回、少し振り込まれているのが不思議だったとのことです。この振り込まれた年金は、在職老齢年金の対象外である老齢基礎年金と経過的加算でした。 ここで、在職老齢年金の計算は、支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-50万円) ÷2 (2024年度)で計算します。 総報酬月額相当額は、毎月の給与(標準報酬月額)とその月以前 1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額を総報酬月額相当額といいます。 基本月額は老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割り、月額を求めます。在職老齢年金の計算には老齢基礎年金、経過的加算は含まれません。ただし、厚生年金基金に加入していた期間がある場合、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した老齢厚生年金の金額も含めて基本月額を計算します。