シンデレラボーイが消える? 出場人数縮小…ゴルフPGAツアーの「スリム化計画」が失わせるもの
「シンデレラボーイ」が消える?
さらにハリントンは、マンデー予選やスポンサー推薦によってPGAツアーの大会に出場できる枠を現行の4名から1~2名に減らし、試合によっては撤廃という案に対しても「絶対反対」の意見を口にした。 「マンデー予選は(ゴルフの試合において)最もエキサイティングなものだ」(ハリントン) マンデー予選を勝ち抜いて試合に出場し、優勝した選手は、これまでにわずか5名しかいない。その5名は当時「奇跡の勝利」と呼ばれ、「シンデレラボーイ」ともてはやされた。 そんな素敵なストーリーを生み出すマンデー予選をなくしてしまったら、「夢がなくなる」「ドラマがなくなる」。そうなれば、ゴルフファンが離れていってしまうと、ハリントンは警鐘を鳴らしている。 近年、PGAツアーはシグネチャー・イベントやプレーオフ・シリーズなど、予選カットのないビッグ大会を増やしつつあるが、ハリントンはその傾向にも批判的な視線を向けている。 「予選カットも、最もエキサイティングなものだ。スター選手の姿が4日間、試合会場にあることをスポンサーは望んでいるが、スポンサーの希望を優先して選手がプレーする機会を奪い、それで解決しようとするのは、まったくおかしな話だ」(ハリントン)
ドリーム・カム・トゥルーは大切な要素
ハリントンが指摘している通り、トッププレーヤーが勢揃いするだけでは、試合やゴルフに「深み」や「広がり」が感じられないと私も思う。「無名の新人」「伏兵」「苦労人」と呼ばれる選手が、小さなチャンスを活かし、一夜にしてビッグスターと化せば、「自分もそうなれるのでは?」という夢や希望を抱くことができる。 ドリーム・カム・トゥルーを期待できる場所だからこそ、PGAツアーには大志を抱いたゴルファーが世界中から集まってくる。その場所を一方的に狭め、スリム化することは、ゴルファーの夢を縮め、ファンの楽しみを減らすことになるのではないかと思えてならない。 舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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