シンデレラボーイが消える? 出場人数縮小…ゴルフPGAツアーの「スリム化計画」が失わせるもの
せっかくの頑張りが報われなくなる
先週のPGAツアーの大会、ワールドワイド・テクノロジー選手権で優勝争いを演じた末に2位に甘んじた35歳の米国人選手、ジャスティン・ローワーは、フェデックスカップ・ランキングを95位から74位へアップさせて来季シードを確実化した。だが、自身が安泰になったことはさておき、ツアー側から提案されているスリム化に対しては「すべてが酷い」と嫌悪感を露わにした。 「PGAツアーで常に上位にいることは、とても難しく、きわめてハードな戦いだ。ほぼ毎試合、上位にいるスコッティ・シェフラーやザンダー・シャウフェレは本当に素晴らしい。どうすれば、彼らのようにできるのか。私は長年、その答えを必死に模索してきた」(ローワー) ローワーは15歳のときに父親と弟を交通事故で亡くし、辛いティーンエイジャーの日々を過ごしたそう。それでもプロゴルファーになり、トッププレーヤーを目指して、長年、鍛錬を積んできた。 2018年には下部ツアーのコーンフェリーツアーからPGAツアーへの昇格にリーチをかけた。だが、わずか500ドルの差でチャンスの扉を開くことができなかった。 「ピラミッドの下の方で頑張っている選手が、やっとのことでよじ登り始めると、そこで何かしらの制度のチェンジが起こり、せっかくの頑張りが報われなくなる。ツアー側が起こそうとしている今回のチェンジのすべてが、私は大嫌いだ」(ローワー)
プレーする機会を奪っての解決はおかしな話
それでは、これまでPGAツアーで大活躍してきたベテラン選手は、今回のスリム化をどう見ているのだろうか。 2007年全英オープンで優勝し、2008年には全米プロと全英オープンを続けざまに制覇して、メジャー3勝を含む通算6勝を挙げたアイルランド出身の53歳、パドレイグ・ハリントンはこんな意見を述べた。 「1試合に156名も出ていれば、プレッシャーを感じることは間違いない」(ハリントン) ハリントンが言う「プレッシャー」とは、「今日中に18ホールを回り終えることができるのか?」という不安や焦りのことだ。 ラウンド途上で日が傾き始めると、選手たちは焦り始め、グリーンから次ホールのティグラウンドへ向かう際に小走りになる。17番、18番あたりで周囲がどんどん暗くなってくると、翌日にプレーを持ち越したくないという気持ちが先走り、最後には全速力で走ることも、ざらである。 「それでも選手たちは、これまでなんとか対応してきたし、今後も対応するはずだ。プレーの進行がスローになった中でのゴルフは、ラッシュアワーの道路で車を運転するようなもの。選手の人数が多すぎるためにそうなることは頷ける。しかし、だからと言って、選手がプレーする機会を奪って解決しようというのは、おかしな話だ」(ハリントン)