ドル決済から弾かれたロシアが夢想する新決済網「BRICSペイ」、中印はどこまで頼りになるか?
■ ロシア貿易で一方的に得をしているインド 例えば、ロシアとインドの貿易に目を向けると、ロシアは資源の輸出で得たルピー資金の処分に困っているという現状がある。 工業力に乏しいインドから輸入できるモノがないため、ロシアはルピー資金を持て余している。はしこいインドはロシアに持て余しているルピーでインドの証券への投資するよう呼びかけ、ロシアもこれに応じている。 しかし得られる収益もルピー建てであるため、結局、ロシアはルピーを持て余し、第三国を経由してルピー資金を金などの現物資産やハードカレンシーに交換し、何とか処分しているようだ。 いずれにしても、ロシアの対印貿易は黒字とはいえ、ロシアはルピー資金を持て余し、インドは割安なロシア産原油を自国通貨で輸入できる関係にある。 このように両国の貿易関係は、その実としてインドに利があるから、インドは今後もルピーで貿易決済を行いたいところだろう。それがCBDCを用いた決済に置き換われば、ルピーによる決済で得ているベネフィット(外貨ではなく自国通貨で割安なロシア産原油を輸入すること)を放棄することにつながりかねないため、慎重な対応を迫られる。 それにインドにとって、BRICS決済網に参加することは、抜き差しならない関係にある中国を利することになりかねない。BRICSの中で最も信用力が高い通貨が人民元である以上、BIRCS決済網の実態は人民元の国際化と重なる側面が大きいからだ。それにインドはインドでルピーの国際化を図りたいため、敵に塩を送るような真似はできない。 それにそもそも論として、インドのみならず、新興国の多くは先進国との間で多額の貿易を行っている。その決済は、主に米ドルだ。ロシアが提唱する決済網に参加すれば、米国によって米ドルの利用を禁じられる「二次制裁」を科されるリスクがある。そのリスクを補って余りあるベネフィットがロシアの提唱するBRICS決済網にあるとは考えにくい。