ドル決済から弾かれたロシアが夢想する新決済網「BRICSペイ」、中印はどこまで頼りになるか?
10月に開催されたBRICS首脳会議で、ロシアは各国に「BRICSペイ」の創設を提案したようだ。各国の中央銀行を通じて、相互に結ばれた商業銀行によるデジタル通貨の決済網である。もっとも、ロシアにデジタル通貨圏の信用力を担保する力はなく、人民元の国際化を進める中国がどこまで前向きになるかはわからない。ドル決裁回避が目的の「BRICSペイ」。果たしてロシアの目論見通りに進むだろうか。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 【写真】ロシアのプーチン大統領となにやら囁き合っている中国の習近平国家主席のこの表情。ドル経済圏から弾き出されたロシアが提唱するデジタル通貨圏にどこまで共鳴しているのだろうか。 ロシアや中国など有力新興国で構成するBRICSは10月22日から24日の3日間、ロシアのカザンで第16回目となる首脳会議を開催した。 首脳会議に先立ちロシア政府が配布した資料によると、ロシアはBRICS各国の中銀を通じて、相互に結ばれた商業銀行による決済網を提案したようだ。各国通貨に裏付けされたデジタル通貨の交換を行うことで、ドル決済を回避する狙いがある。 この構想は、いわゆる「BRICSペイ」と呼ばれるもので、かねてよりドル離れを図りたいロシアが主張していたものだ。 BRICS首脳会議後の共同声明でも、BRICSペイの導入に向けた動きを加速する文言が盛り込まれたようだ。実際に近年のデジタル技術の発達に鑑みれば、システムの構築そのものに対する障害は特に見当たらないといえよう。 首脳会議には、昨年のサミットで新たに参加を許されたイランとエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアの4カ国に加えて、BRICSに未加盟の新興国27カ国が参加した。これらの国々にもロシアはBRICS決済網の利用を呼びかけているが、ロシアと中国以外の新興国がこの決済網を積極的に使うかは微妙なところだ。 ロシアと中国の貿易決済は現在、暗号資産、それも米ドルとの間で固定レートでの交換が保証されているステーブルコインで行われていると言われる。これを中銀デジタル通貨(CBDC)に置き換え、双方の中銀と商銀を結ぶ決済網を構築することには、確かに意味がある。しかし、これはあくまで双務貿易(二国間貿易)に限定した話である。 ロシアは中国に対して資源を輸出し、それで得た人民元資金で資源以外のモノを輸入する。ロシアの対中貿易は黒字だが、それでも中国は国内でダブついたモノをロシアに輸出することができるため、Win-Winの関係だ。 双方に利がある貿易のため、ロシアと中国の貿易決済を円滑化することには意味がある。しかし別の国とだと話が変わる。