米大統領選で中絶問題が争点に、バイデン氏はトランプ氏の弱み突く
それでも「中絶は共和党にとって政治的な急所、選挙上の急所であることに変わりはない」と民主党の政治ストラテジスト、マリア・カルドナ氏は話す。「米国人の大多数は、中絶に対する共和党の過激な反対姿勢を支持していない」という。
赤い州で規制強化の動き
連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆した2022年6月以来、少なくとも14州が中絶を全面的に禁止した。中絶の権利擁護を主張するガットマッハー研究所によると、さらに7州がかつては違憲であったであろう方法で中絶を制限している。
一方、メリーランド州とニューヨーク州では今年、中絶権利の保護を州法に明記することを目指す住民投票が実施される。これまで同様の取り組みで8州が中絶権利の明文化に成功した。
次はフロリダ州かもしれない。同州の最高裁は1日、州憲法に中絶の権利を明記するか否かを問う住民投票の実施を認める判断を下した。他にも複数の州でこれに続く動きがある。
コーネル大学のランドン・シュナベル助教(社会学)は「世論調査は、米国人の大半が特に妊娠初期に関して、合法的な中絶を大半かすべてのケースで支持していることを一貫して示している」と指摘。「厳格な中絶禁止に賛成する国民は多数派ではない」と述べた。
共和党のメッセージに揺れ
トランプ氏は中絶規制を各州の判断に委ねると表明することで、連邦レベルで規制導入を求める中絶反対団体からの圧力に抵抗している。中絶反対団体や一部の政治家の間では、妊娠15週以降の中絶を全米で一律に禁止する案が有権者を納得させるコンセンサスになるとの議論が浮上している。
トランプ氏は12日、私邸があるフロリダ州パームビーチの会員制高級リゾート「マールアラーゴ」で、中絶反対派のマイク・ジョンソン下院議長と記者会見に臨む。トランプ氏は変化する中絶を巡る状況について多数の質問を受けることになりそうだ。
米国で中絶権利への支持はロー対ウェイド判決が覆される前よりも増えているが、その数は党派によって変わり、妊娠期間を経るごとに減る。ギャラップが2023年5月に発表したデータによると、妊娠初期3カ月の中絶は合法であるべきだと考える人は69%に上った。