黒岩祐治・神奈川県知事に聞く(全文3完)長生きが幸せな国でないとおかしい
2050年は「明るい超高齢社会」
── 日本の従来モデルを変え、自分たちの経験を発信するということで、世界が神奈川に注目しているところが非常に興味深いです。2050年という話が出ましたが、知事は、神奈川県がこんなふうになってほしい、こういうふうな県になっているのではないかというイメージを持っていますか。 一言で言うと、明るい超高齢社会ですね。何というか、これは外部から言われたんです。WHOの人からも言われました。私がこういうことを一生懸命しゃべっていると、「黒岩さんは、超高齢社会を非常に明るく捉えていますね」と言われたんですね。 はっと思って、「確かにそうです」と。逆に言うと、みんな暗く捉えると。「女性とご老人がいっぱいあふれて、超高齢社会になったらどうするんだ、みたいな非常に暗いイメージで捉えるというのが普通だ」というふうに言われて、「あ、そうか」と思ったんだけれども、逆にそれを乗り越えるということが課題に見えるわけですよね。課題を乗り越えていけば、明るい超高齢社会。だからスマイル神奈川というのはそういう意味でもあるんですね。 大体考えてみれば、長生きできるというのは幸せなことじゃないですか。みんなが長生きできたら幸せな国ということでしょう、本来は。そうじゃなきゃおかしいじゃないですか。 みんな長生きしているのに、なんかみんな暗い気持ちになって、長生きしたことによってみんな孤独感にさいなまれ、不安ばかり抱えて、という、そんな社会なんて、とてもとても我々は容認するわけにはいかないですよね。みんながニコニコしているという超高齢社会を目指す。そのためには、やっぱり今から準備しなきゃだめだということなんです。
「子供たちは大丈夫なのか」 将来のために全世代で未病改善プログラム実施
それとともに、そういう社会、超高齢社会を考えたとき、ご老人の話をしましたけれども、2050年を目指しているとき、子供たちがどうやって育ってくるかということなんです。「未病を改善」という話を、私が提案し始めたころは中高年齢層をターゲットに考えていました。 ところが、子供たちは大丈夫なのか、ということを考えた。あるドクターが、「最近の子供たち、神奈川県の子供たち、基礎的運動能力が著しく欠如している子がたくさんいるんですよ」と言われた。「どういうことですか」と言ったら、しゃがむことができない。しゃがんだら後ろに転んじゃうんですって。「背伸びしなさい」と、背伸びもできない。「それぐらいの運動能力がない子がたくさんいるんですよ」と言われて、えっと思った。 さっき未病を改善するためには、食、運動、社会参加と言いましたね。運動も、基礎的な運動能力が欠如している子がいるという。食は大丈夫なのか、といったら、小さいときからすごい偏食をする子がいますよね。バランスのいい食事をとるような習慣がついていないと、この先どうなるんだろうと。社会参加は大丈夫なのかと。みんな閉じこもりきりになって、あまり友達と遊んだりじゃなくて、1人でSNSだなんだ、と子供のときからやっているという。 そうすると、子供のときから、食も運動も社会参加も欠如した子が育っていったときに、大きくなってからといったら未病を改善、もう間に合わないですね。ですから、子供のうちから未病を改善、ということを習慣づけていく。ここをやっていかないと、2050年、みんなが笑顔で、とは、なかなかいかないわけですね。そういう意味で全世代の未病改善プログラムを今進めているというところなんですね。 ── 50年後、今の子供たちの世代が壮年と言われるとき、その子たちが考えを継承し、屋台骨になっていかないといけない。 そうですね。