小説のタイトルが『小説』……前代未聞の「野﨑まど」ワールドは、「宇宙」「妖精の国」「アイルランド」となんでもアリ!?
「読む」とは何か。小説の存在意義とは。 鬼才・野﨑まどさんによる4年ぶりの最新長編『小説』には、その答えがすべて詰まっている――。 【写真】「なぜ小説を読むのか」に迫る衝撃作 今回は謎に包まれている野﨑まどさんにインタビューを敢行。 前編では『小説』の魅力を存分に語っていただきました。 【聞き手・構成】あわいゆき 野﨑まど(のざき・まど) 1979年、東京都生まれ。麻布大学獣医学部卒業。2009年『[映]アムリタ』で第16回電撃小説大賞「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。2013年に刊行された『know』で第34回日本SF大賞・第7回大学読書人大賞それぞれの候補、2021年『タイタン』で第42回吉川英治文学新人賞候補となる。2017年テレビアニメーション「正解するカド」でシリーズ構成と脚本を、2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』で脚本を務める。「バビロン」シリーズは2019年よりアニメが放送された。
四年ぶりの最新作『小説』。物語の主人公は「読者」
──四年ぶりの新作となる『小説』。本作のテーマをずばり、お聞かせいただければと思います。 テーマは「小説」となります。タイトル通りにストレートです。 ──なぜここまでストレートなタイトルにされたのでしょうか? やはり、小説がテーマであることが読者に伝わってほしいからです。タイトルがそのものであれば、それがベストではないかと。「野﨑まど 小説」で検索してもヒットしづらくなるので出版社の販売の方からは怒られそうですが、そこは編集さんが何とか説得してくれると信じています。 ──「小説」がテーマときくと「作り手」である作家の物語をイメージする人も多そうですが、本作では「受け手」である読者に焦点が当てられ、「小説とは何か、何のために小説を読むのか」という問いが全編を通した軸になっているのが印象的でした。 ここ数年、クリエイターを主人公に据えて作り手の思想や価値観に光を当てる作品が増えたように思います。でも、作り手と受け手の力関係は本来五〇パーセントずつですし、書き手もまた、読者でもあります。作る側、受け取る側どちらが欠けても創作は成立しないので、受け手のことをじっくり描いた作品を作りたいとは以前から思っていました。