インフラ老朽化のNY大寒波直撃―暖房故障で命の危険、それでもタフな市民
賃貸とセントラルヒーティングの悲劇
実際そのテレビを自宅で見ていた筆者のアパートの中でさえ、うすら寒い状態でした。築100年近い古いブラウンストーンの建物全体に張りめぐらされた管の中を熱いお湯が循環することで室内を温めるという、書いてしまうとかなり心もとないセントラルヒーティング・システムですが、例年通りの気温ならば、Tシャツ1枚で過ごせるほどの暖かさは保たれています。 ところが今回の大寒波、さすがにお湯では荷が重すぎたようで、セーターを着込んでのカウントダウンで新年を迎えました。結露が窓枠周辺で凍ってしまったのが氷点下続きでとけてくれず、窓もここ10日以上開けられないままです。 ちなみにニューヨーク市では、室内を最低でも昼間は20度、夜間は16度に保つことが大家に対して義務づけられています。それ以下になったら、市のホットライン(311)に電話して苦情を申し立てると、市が事態への対応を大家に強制してくれるという仕組みです。 とはいえ、本来なら暖房が効いていないのであれば大家に直接言えばいいわけで、そもそも311に電話している時点で“悪徳”大家の可能性大ですから、市の担当局が介入したところで、そう簡単に問題解決とはいきません。寒さで管が破裂して暖房もお湯もない状態なのに、いくら電話しても繋がらないなんてことはざら。「NY1」という市のローカルニュースで、昨日もブルックリンのあるアパートの住民たちが「20 Days No Heat」と書かれたサインを持って、建物の前で抗議している様子が流れていました。20日間って……。 もっとも、「市が大家」である公団住宅も同じくらい悲惨です。この大寒波で、311には何千件もの「暖房が効かない、お湯が出ない」という苦情が寄せられています。NY1の番組内でも、マンハッタンの公団住宅に住む女性が、コートやマフラーをしたままでないと寒くて眠れないと訴えていました。向かいの部屋のおばあさんはオーブンをつけっぱなしにしたり、湯を沸かしてしのいでいるそうです。この公団住宅では暖房もお湯もない状態が7日間続いています。 そして最悪なことにこれが例外ではありません。ニューヨーク市ハウジング当局(NYCHA)は先週末だけで1万件の故障に対応したとの声明を発表していますが、まだまだ問題の全面解決にはほど遠く、そもそも1万件も直しが出ていること自体が問題です。市長もラジオのインタビューで築50、60、70年の公団がほとんどのなかで、これまでNYCHAが適切な修理を怠ってきたから、非常事態に集中して問題が発生するのだと指摘していました。 ニューヨーク市では、大半の人が賃貸物件に住んでいる(その割合なんと70%とも)ため、暖房やお湯といった生活の基本を大家の誠意や役人の熱意に委ねなくてはならないという、かなりしんどい状態にあります。そして、時として命に関わるような深刻な問題にもなりうるのです。