農薬や添加物は危ない?「荒唐無稽」な陰謀論が後を絶たない納得のワケ
「福島産の食品は放射能汚染されている」「気付かぬうちに昆虫を食べさせられている」……などなど、食情報においても陰謀論が猛威を振るっている昨今。何が本当なのかが分かりにくい時代に、私たちはどのように対処したらいいのだろうか。科学ジャーナリストが陰謀論に振り回されない方法を指南する。本稿は、松永和紀著『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』(大和書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 荒唐無稽な「陰謀論」の 出典はどこなのか 陰謀論というのは、オックスフォード英英辞典によれば、「影響力のある、あるいは支配的な組織やグループが、注目すべき出来事や現象を密かに引き起こしていると信じること」だそうです。 「9.11テロの発生には米連邦政府が関与している」とか、「新型コロナウイルス感染症は、ディープステート(闇の政府)によって操られている」など、荒唐無稽な話を信じ込む人がいます。 食情報においても、陰謀論が猛威を振るっています。たとえば、ある除草剤について「ベトナム戦争で使われた枯葉剤と同じものだ」とする、科学的にはまったく事実ではないことが広く語られています。また、「多国籍企業の圧力を受け、種子法や種苗法が改正された」「気付かぬうちに、昆虫を食べさせられている」などの説も、SNSを介して広がりました。 不安の多い時代です。よくわからないまま宙ぶらりんになっているよりも、「強大な組織があって密かに動いているのだ」と理屈をつけられたほうが、気分が落ち着く、という人も多いでしょう。 でも、間違った情報で腑に落ちてしまうのは、次の間違った判断につながりがちです。食情報の複雑さや、食品がもともと持つ自然由来の化学物質や微生物などにはまだわからないことが多数ある、というのが現実であることを知っておいてほしいのです。 陰謀論に取り込まれないためには、その情報がどこから出ているのか、という出典を確認してください。陰謀論はたいてい、出所、だれがそう判断したのかがわかりません。食情報については、学術論文や国の報告書であれば一定程度は信頼度がある、と考えられます。ただし、学術論文は質はさまざまです。常に検証され、新しい研究成果によって補強されたり覆されたりします。情報更新も忘れないようにしてください。