劇的王座奪回!村田諒太が紡いだエディオンアリーナ大阪の“奇跡”
プロボクシングのダブルタイトル戦が12日、大阪浪速区のエディオンアリーナ大阪で行われ、WBA世界ミドル級タイトルマッチでは挑戦者の村田諒太(33、帝拳)が王者のロブ・ブラント(28、米国)を2回2分34秒TKOで下して王者に返り咲いた。前回に比べてスタイルを変えた村田は終始前へ出てボディから殴り続けブラントの戦術も心も叩き潰した。ベルトを失った王者が再戦で奪還したのは輪島功一氏、徳山昌守氏以来、史上3人目、4度目の快挙である。 我らのヒーローが蘇った。 6500人で埋まった満場の“村田マニア”たちが立ち上がり絶叫した。怒涛の喧嘩ファイト。最後に右フックの2連発で、よろけたブラントがロープを背負ったとき、レフェリーは、やっとのことで割って入り右手を振って試合終了を告げた。 「早よ、止めろよと。ほっとした。終わったと。しばらくして嬉しさはくると思う」 村田は両手を上げて放心状態のまま青コーナーへ帰りカルロス・リナレス・トレーナーと抱き合い、肩車をされてもガッツポーズはぎこちなかった。 「前はブラントの夜。今日は僕の夜だった」 エディオンアリーナ大阪に“奇跡”が起きたのだ。ファンは涙していた。帝拳グループの総帥の本田明彦会長は飛び上がっていた。 「再起して良かった。本田会長が飛び跳ねて喜ぶなんて見たことがない。そのシーンを作れたことが嬉しい。僕は歯車の一部。リング上でも言ったが、ナンキン(南京都高ボクシング部、現在・京都廣学館高)が居場所をくれた。東洋大もそう。帝拳も僕を一部として受けいれてくれた。居場所があり、そこに還元できたことが嬉しいんです」 会見途中で村田は一度だけ涙ぐんだ。 ゴングと同時にブラントは昨年10月のラスベガスの試合とは戦法を変え、足を止めて前に出てきた。村田は「ビックリした。“こう来るか”と面食らった。パンチもあった」という。 1分間、村田は打たれた。村田は、またもやパンチの嵐にさらされた。瞬く間に顔に赤い傷が増えていく。1262発を被弾して負けた9か月前の悪夢の再現が頭をよぎる。 「前だよ」「前で殺せ」 コーナー下からの本田会長の声が聞こえた。 村田はブロックでさばきながら被弾覚悟で前へ出た。 「前へいくしかない。この試合が最後になるかもしれない。絶対に後悔はしたくない。相手が出てきても、それに対して前へ出る練習もやっていた」 スパーリングで嫌というほど繰り返してきたボディを打った。得意の左のボディアッパーに加え、今回は、突き刺すような右のボディストレートを交えた。 ブラントの上下に散らすパンチを受けながらも体を振って身もだえするように前へ出続けた。左右のパンチの乱打。右はストレートというより横殴りの荒っぽいフック。 試合後、ブラントが「右手の角度を変えてきたと思う。野球のバットを振るようなスイングがあった。自分のガードをかいくぐって当たった」と評したパンチだ。 だが、このラウンド、ジャッジの2人はブラントの手数を支持している。