劇的王座奪回!村田諒太が紡いだエディオンアリーナ大阪の“奇跡”
2ラウンドに入ってブラントが足を使いだすと村田のプレスが増す。サイドにステップを踏みブラントとの距離を一定に保ちながら逃がさない。これでもかと続けた右ストレートがヒットした。明らかにダメージを受けたブラントがクリンチで逃れにくるが、村田は突き放して思う存分パンチを食らわせる。大きな左フックにぐらついたのを確認するとコーナーに追い込んだ。もう滅多打ちである。 防戦一方のブラントは右フックを浴び背中からキャンバスに崩れ落ちた。 すぐさま起き上がってきたが、村田は休まず襲い掛かる。ブラントは両手でロープをつかんだ。だが、アッサン・エンダム(フランス)との第1戦でもダウンを認めなかったルイス・パボン氏(プエルトリコ)は、それをダウンと判断しなかった。しかも、ブラントが棒立ちになった時に、一度、両者の間に入ろうとして、試合を止める素ぶりを見せながら途中で中断して後ずさりしてしまったのである。 「あと何秒やろ。エンダムのときと一緒でやっぱり止めへんのか? いらんことが(頭を)よぎった。もう1回ダウンをとらなあかん」 村田は後先を考えず勝負をかけた。 右アッパーから左の脇腹にボディブローをめりこませた。 「“うっ”という顔をした。その瞬間に勝ったかなと思った。心が折れたかなと」 挑戦者は勝利を確信したという。 実は、この時、ブラントのコーナーも混乱していた。 「もう(棄権をして)止めろ!」 「いやまだいける!」 セコンドが言い合いをしている間に村田が試合に決着をつけた。 米国のパンチ解析会社のデータによると、村田は、この試合で211発のパンチを繰り出して98発(46%)をヒットさせた。対するブラントは143発中42発(29%)で前回の試合のデータをひっくり返した。「これだけ打ったのは初めて。噛み合った」と村田が言う。 帝拳の浜田剛史代表は「相手が予想以上に出てきたが、それが逆に良かった。前回の反省を踏まえ、同時に打つという考えがあった。パンチが同時なら村田が上回っていく。それが2ラウンドに来たということ」と分析した。 ブラントの戦術変更は結果的に村田にプラスとなった。 本田会長も「徹底的に対策を考えて、その通りできた。半歩前。ブロックも全部前。その勇気があるかないかで決まると思っていた。何しろ手を出せと。倒さないと勝てない試合に倒しにいった。まさか2ラウンドとは思わなかったが、ワンサイドで技術的に完全に負けた後に、なかなかこういう試合はできない。村田は持っています」と絶賛した。