古舘伊知郎も証言「民主党政権時代の圧力」の実態を元産経記者が振り返る
会計検査院を担当
民主党政権への忖度を感じることは他にもあった。 2010年の秋、会計検査院の第4局が重大な調査を始めた。北海道教職員組合(北教組)のヤミ専従を調べ出したのだ。 民間企業の場合、労働組合法2条などで、組合の専従員が企業側から給与を支給されることは、会社の支配介入とみなされ、禁止されている。組合の専従員は組合費で活動する。 しかし、公務員の場合は勤務時間内に職員団体の活動をすることは、公務員に職務専念義務を課している地方公務員法35条に違反し、違法だ。 当時の会計検査院第4局長は、文部科学省関連事案の会計検査の第一人者だった。近畿地方の有名な寺院が重要文化財級の高価な仏像や絵巻きなどを秘密裡に売っている、という情報を聞きつけ、調査を完遂させたという伝説を持っている人だった。 2010年2月、北海道5区選出の小林千代美衆院議員の陣営で政治資金規正法違反事件が降って湧いた。 検察の起訴状によると、2009年8月の衆院選の際、北教組の委員長が2008年12月から2009年5月にかけて、3回にわたり計1200万円を、2009年7月に北教組委員長代理が400万円を、小林衆院議員の陣営の経理担当だった男性に渡したという。 小林衆院議員は北教組が「責任組合」として支援し、北教組委員長(起訴当時故人)や北教組委員長代理が選挙対策本部長を務めるなど、丸抱え候補ともいえた。陣営の経理担当だった男性は、自治労北海道の財政局長だった。 関係者は黙秘していたというが、検察はこの二人を在宅起訴し、札幌地裁で執行猶予付きの有罪判決が下った。北海道教職員組合にも両罰規定が適用され、有罪の罰金判決が下った。 当時は鳩山由紀夫首相の脱税などが指摘されており、北海道のこの件も大きなニュースになった。 これを受けて、会計検査院が北教組のヤミ専従の調査に入ることが分かった。 当時、公立小中学校の教職員に支給される給与の3分の1は、国が義務教育費国庫負担金として補助していた。会計検査院が「ヤミ専従」を調査したのはこれが初めてで、彼らの鼻息は荒く、腕利きの職員でチームを結成した。まずは北海道をターゲットにしたが、このほかにも岩手、大阪、兵庫などの20前後の道府県を対象にした。