「弔い選挙」圧勝 自民ではじまる「安倍不在」の党内政局
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7月10日に投開票された参院選は、自民党が現行制度で過去最大に迫る63議席を獲得する圧勝劇をみせた。自民や公明党、日本維新の会など憲法改正に前向きな「改憲勢力」も発議に必要な「3分の2」以上を確保。選挙戦の最終盤、 安倍晋三元首相が凶弾に倒れた ことで、「弔い」の様相を呈し、自民に強い追い風ともなった。 選挙結果は、安倍氏が悲願とした憲法改正や防衛費の増額などに取り組みやすい環境を整えたともいえる。首相は「遺志を受け継ぐ」と実現に意欲をみせるが、旗振り役の死去は混乱も広げそうだ。安倍氏は自民党最大勢力の安倍派の領袖でもあり、同派が分裂する可能性も含め、党内力学が大きく変化する可能性も出ている。 最初に焦点になるのが、政府が年末にかけて進める外交・安全保障戦略の指針「戦略3文書」の改定作業だ。この中には、向こう5年間の防衛力の整備計画を定める「中期防衛力整備計画」(中期防)が含まれている。ロシアのウクライナ侵攻を受け、首相が明言した「5年以内に防衛力を抜本的に強化」の具体策を明示し、来年度予算から実行に移すことになっている。 政府が6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」は、対国内総生産(GDP)比2%以上の防衛費を加盟国に求める北大西洋条約機構(NATO)の例を紹介しながら「5年以内」と明示した。この基準を達成するには、今の日本の防衛費を毎年1兆円程度ずつ積み増さなければならないとされる。
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