夏から秋になる時期に増える腹部の膨満感、胸焼け、胃もたれ、胃痛…便秘の治療をしたら解消したワケ
胃と腸の整え方
消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。 【図解】腸内細菌と関わる病気あれこれ
長かった猛暑は一段落しましたが、この時期は胃腸の不調を訴える患者さんがよく受診されます。会社員の女性Iさん(36)は、9月の初めごろから、腹部の膨満感や胸焼け、胃もたれ、胃痛が出て、しだいに食欲も低下してきて、なんとなくだるいということでした。何度か通っていただいてわかったのは、大腸にガスがたまって、そのせいで、胃の症状が出ていることでした。たかがガス、されどガス。たまると、腹部の不調を招きます。どう排出すればいいのでしょう。
胃カメラ検査ではさしたる異常はなく、機能性ディスペプシアと診断
Iさんは、外回りの仕事もあり、この夏は冷たいものを頻繁に飲み、元気をつけるつもりでスパイスやニンニクの利いた食事を多くとっていました。冷たい飲み物や刺激の強い食べ物は胃に負担。エアコンで冷えることもあり、夏場は胃の不調を訴える方が多くなります。 診察すると、みぞおちに圧迫感があり、触診をすると圧痛を訴え、膨満感もあると言います。ところが胃カメラで検査をすると、ごく軽い食道炎と胃のただれが見られた程度でした。 以前なら軽い胃炎と診断するところですが、近年は明確な異常がない胃の不調は機能性ディスペプシアという病名が使われます。それに合った薬を処方し、胃の症状はやや改善しましたが、すっきりとはよくなりませんでした。
夏には便秘気味で、解消したらガスも出てすっきり
その後の受診でさらに詳しく話を聞くと、便秘気味なこともわかりました。暑い夏には便が硬くなる人が多いのですが、Iさんも通常は2日に1度なのが、3日に1度に減り便が硬くなっていました。便通のない日は、腹部全体にガスがたまったような膨満感があるそうです。 そこで便秘の薬として使われ、便をやわらかくする酸化マグネシウム製剤の処方を追加し、水分摂取を増やすようにアドバイスしました。その結果、排便状態が改善し、回数が増え、おなかにたまったガスを排出しやすくなりました。それとともに胸焼け、胃痛、胃もたれ、食欲不振が改善。便通が正常化してガスを出しやすくなったら、胃の不調が解消したわけです。ガスをためずに出すのは大切なことなのです。